22話・結婚って?
どこだろう、ここ。ふわふわする。
誰かが私を呼んでる。
「カナ、カナ! 良かった目が覚めたか」
「…………ここは?」
「城に戻ってきたんだよ」
違う。元の世界じゃなかった――。
「カトル、あの後私は?」
「魔法を使って疲れたのだろう。倒れたんだよ」
「そう――」
魔物がいなくなっても元の世界には帰れなかったのかぁ。
ふぅと息を吐いてから、両手で顔を押さえた。
「カナ」
泣きたいのに、彼の存在が邪魔をする。
片方の手をとられて、私は彼の顔を見た。
「私と結婚してくれ」
ーーー
どこか、一人になれる場所――。
私は、一人走っていた。
「カナ、あそこなら鍵穴に結界をはれば」
ライトが言うあそこって、そうかあの場所なら誰も近寄れないよね。私は、鍵を握りしめ、契約を交わした場所へと――逃げた。
ーーー
「ライト、教えて……」
「なんだ?」
「私はこの世界から帰れないの?」
「聖女の契約は、この国で死ぬ事を誓う契約だ。遠くに行かないように、カナの魂は縛られている。その代価として、僕達の光の魔法で国を守っている」
「な……にそれ……」
「元の世界に帰ることは、僕では無理だ。僕も契約に縛られている精霊だからね。それに――」
ライトの声が止まる。
「それに、何?」
「――、リサなら出来るかもしれないね」
「え?」
リサさんなら、出来る? 何で?
「リサは聖女の契約を
「何で……」
聖女の契約をしていないの? じゃあ、彼女は元の世界に帰れるってこと? 私は帰れないのに?
「カナ、僕は今から君にとても嫌な知らせをしないといけない」
「え――」
「君はこのままでは、死ぬ」
何? 死ぬって。私が?
意味がわからなくて私は固まってしまう。
「そうだ、カナの中に魔獣の卵がある。魔獣はカナに見えない魔物の別のかたちだ。それが孵化すれば、君は君でなくなるだろう。それに、予言の魔物はまだ生きている」
あれは、違ったの? いったい何が起こってるの?
「君が望む未来が欲しいなら、言う通りに動くしかない。リサに外の国を巡ってもらい強くなってもらうんだ――。その為にカナ、リサはこの国にいらないと王達に言わせるんだ」
ーーー
「きれい……」
誰もいない場所から声が聞こえた。
「誰?!」
誰も入ってこれないはずの場所に、――でもこの声は。
「カナちゃん」
「その声は、リサさん?」
「うん、そうだよ」
聞いた声だ。でもやっぱり、リサさんの姿は見えなくて。
「リサさん、夢なんかじゃないですよね。本当にいるんですよね」
「いるよ。ごめんね、すぐに会いに行けなくて」
「いいです。もう。私、帰れないって……」
ライトとしていた会話を思い出しながら、私は続ける。元の世界から持ってきた、スマホを握りしめて。
「彼氏がいたんです。私。彼に会いたくて、帰りたいのに。もう、帰れないって……」
でも、帰りたい。帰りたいよ!
「お父さん、お母さん、お兄ちゃんにも、もう……」
タツミ、会いたいよ!
涙が勝手にポロポロとこぼれ落ちる。
「だから決めたんです。私! ここで生きていきます。もうそれしかないから。リサさんと違って……」
お願い、リサさん。私を助けて――。
「だから、さようなら、リサさん。もう二度と会わないで下さい。……嘘つき」
「まって!」
リサさんは何か言いたかったのかな。でも、こうしないと、帰れない。違う、帰る為にはこう動けばいいのよね――? ライト。
私は立ち上がって、外に向かう。言われた通りに動かないと――。
バタン
後ろで扉が音をたてて閉まった。
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