18話・もう一人の聖女
暗い暗い闇の中で、私は目を、耳をふさぎ続ける。
このまま、ずっとここにいないといけないの?
でも、戻ったところでタツミのいる世界じゃない……。
「カナちゃん」
また誰かの声がする。女の人?
「この光がカナちゃん?」
私の目の前に、誰かが立つ気配がした。
「……誰?」
耳に当てていた手を外す。目はつぶったまま私はその人に問いかけた。
「あなたがカナちゃん?」
「……そう。私はカナ。あなたは?」
「私はリサ。
イシイリサ。もしかして、私みたいに喚ばれたもう一人の女性?
名前はとても日本人みたいだけれど。
「日本人?」
私は、声の主に聞いた。
「そう。私は日本からここにきた。あなたと同じ」
私と一緒。でも、この人は第二王子様と婚約したんだよね――。だから、帰り方なんて、考えないんだろうな。
「……帰り方を知ってる?」
「ごめんね、私はここにきたばかりで。私も帰り方を探しているところなの」
ほらね、やっぱり。あれ? 帰り方を探している? 何で? 婚約した王子様は? どういうこと――。まだ別に誰かこの世界にきた人がいるの……?
「カナちゃん、一緒に探そう。帰る方法。だから私とお話、しよう! 聞きたいこともあるし」
信じていいのかな。私、帰れるのかな。
「……うん。リサさん、約束よ。帰る方法一緒に探してね」
考えたって、他人の考えることはわかるわけない。なら、探そうって言ってくれるんだ。私は、信じて、リサさんともとの世界に帰るんだ!
「ギューィギューィ、セイジョフッカツゼツボウセズセイジョフッカツ」
またあの暗い声が耳障りな音で、叫ぶ。
「シッパイシッパイ」
失敗って、何の事だろう。私はゆっくりと目を開けた。
誰もいない――――。
目の前に、私が寝ている。幽体離脱っていうのだろうか。
「カナ、戻れるか?」
「……その声はライト?」
「あぁ」
「……戻れるわ」
こういう時は、魂と体を重ねて元にもどれーってすればいいのよね。私、死ぬわけにいかないもの。
自分の体に近付いて、私は勢いよく重なる。
もとに戻れと願いながら。
私は寝てる暇なんてない。帰れるかもしれない希望が出来たんだ。
リサさん、約束だよ――。
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