19話・探して!
「カナ! 目が覚めたのか!」
私が目を覚ましたことをすぐに側にいた人がカトルに知らせに行ったみたい。
というか、外が暗い。何時なの?
「大丈夫か? 何があったかわかるか?」
「あの、カトル、痛いです」
「あ、あぁ、すまない」
ぎゅっと抱き締めてきた腕の力を緩めて、カトルはこちらを見る。
「急に倒れて、心配したんだよ」
やっぱり、あの時私倒れたんだ。それで――。
「カトル!」
急に私が名前を呼んだことに少し驚いた表情を浮かべたカトルは、すぐに普段の顔に戻し聞いてきた。
「なんだい? カナ」
「イシイリサさんを探して! 私と同じ日本人の!」
カトルの眉が少しだけ動いた気がした。
「もう一人の女性は、私みたいに黒い髪で黒い瞳じゃない? もしかして――」
「カナ、何があったかわからないけれど落ちついて。イシイリサだね。わかった探す。だから、もう私を――」
カトルの言葉がつまる。私を? 続きは何だろう。彼は何が言いたいの?
「カトル?」
顔を傾けて訊ねるけれど、続きの言葉はなかった。
「カナ」
手をぎゅっと握られる。放してほしいけれどどこか悲しそうな顔をするカトルのことが、迷子の子どものように見えてしまって少しだけと自分に言い聞かせ我慢した。
少しの沈黙のあと、彼は立ち上がり言った。
「朝からは前に言っていたパレードだ。カナ大丈夫か? 無理なら――」
そうだ、パレードの日だ……。あんなに沢山の人達が準備しているのに、私一人のために――。
「大丈夫。朝まで休めば問題ないよ」
少しだけ悩んでいるみたいだったけど、すぐに微笑み、彼は労るように言う。
「わかった。無理だけはしないでくれ」
「はい」
「また朝に迎えに来る。深夜に部屋を訪れてすまなかった」
そう言って、カトルは部屋を出ていった。
「カナ」
「ライト?」
「リサは、近くにいる。召喚された女性だ」
「そう……」
カトルは、探すと言っていた。つまり彼女に会わせたくないということなのかな。
どうして、そんな事をするの――?
「リサは、カナと違って、聖なる力も魔なる力もある」
「えっ、それじゃあ」
「どちらの力も持つ完全な聖女だ」
…………。カトルは、どこまで私に嘘をつくんだろう。私を守るため? 偽物なのに?
「そう――――」
寝ていたからなのか、眠れそうにない私は前みたいに、魔力を使う魔法を使う。
「ライト」
ポゥッと、光が現れてゆっくりと室内を照らす。
たったこれだけなのに、もう眠気が来た。
「ホント、全然ダメダメだね……」
明日は、パレード。だけど、その主役は偽りの聖女様。
「私は、どうなっちゃうのかな――」
ゆっくりと、瞼を閉じて思考を止めた。考えたってわかることではないから。
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