第3話 それからの日常
衝撃的な生贄候補になりましたから一夜明けた。わたしは普通に高校に通う準備をしていた。お小遣いの関係上で日本一周旅行も無理である。昨日は一日中テレビを見ていた。
虚しくなって学校に通うことにした。要はする事が無いのである。通学路はバス停まで自転車で行き、そこから20分くらい揺られて着くのであった。
「夕菜、暗いよ?」
面倒くさいので友人Aでいいや。
「友人Aは悩みが無くて幸せそうだな」
「何、その友人Aって?」
「気にしない、気にしない」
友人Aは何事もなかった様に去って行く。むむ、友人Bの気配がする。しかし、誰も来ない。わたしには友人Bもいる事を説明したかっただけである。
「夕菜様、一人で何をブツブツ言っているのですか?」
わたしに心配そうに話しかける凛を見て……。
「そうだ!スールにならないか?」
凛は聞くだけならタダだと言う感じである。百合展開にして生贄を無かった事にしよう。
「夕菜様、そのスールとは何ですか?」
「義兄弟の契りの事だ」
「サカズキですか?」
「ま、そんなところだ」
きっと、マリみてなどと言っても誰もわかるまい。安心して盗用できる。
あれ?今にも逝きそうな気分だ……。気がつくと凛に首を絞められていた。
「違う!スールの契りはもっと運命的なものだ」
どうやら、凛は何かを勘違いしていたらしい。これは……百合展開は不可能かな……。
「やはり、サカズキですか?」
「えへへへ……」
「えっちなのはダメです」
凛に止められて妄想をうちきるのであった。やはり、生贄エンドかな……。担任が入ってきてホームルームが始まる。
そんな日常の一日が始まるのであった。
第二グランドの隅で寝ていると友人Bがやってくる。
「夕菜、ちょっと、あの髪の長い女子紹介してよ」
どうやら、百合展開らしい。
「えー、わたし、百合は飽きた」
「そんな事は言わないでさ」
確かに凛のキリリとした眼差しは魅力的である。まさに、男も女も惚れるのであった。
凛は良いな。
「夕菜様、何やら、物欲しそうな顔ですね」
「そうなのだ、凛みたいに綺麗になりたいのだ」
「では、入れ替わってみます?」
凛はわたしにおもいっきり頭突きをする。
……。
気がつくと目の前にわたしがいる。これは俗に言う『入れ替わってる!』である。わたしは下に目線を降ろすと。豊満な胸が広がっている。
「良きかな、良きかな」
と言う訳で友人Bに抱きつく。
「えっちなのはダメです」
ケチケチするな『入れ替わってる!』で他に何をしろと。それはめくるめく官能の世界であった。
「さて、ごちそうさまでした」
凛はジト目でわたしの姿を見ている。
「夕菜様にはやれやれです。早く元に戻りましょう」
わたしは首を傾げる。これはこれでいいからなー。まあ、問題なかろう。
男子も食べてみたし。
……。
突然の落雷である。お約束の元に戻るである。どうやら、何かの怒りに触れたらしい。ま、楽しかったからいいか。
「凛、校舎に戻るぞ」
「はい、夕菜様」
わたしは生贄のことなど忘れて上機嫌であった。
「あーメロン食べたい」
どうせ、一ヶ月後には死ぬのだ、贅沢をしたい。バス停からの帰り道で無性に食べたくなる。
「凛、コンビニでかき氷でも買って帰るか」
「はい、夕菜様」
少し寄り道をしてコンビニに入るのであった。何故、関東南西部を救う、わたしが小銭しか持ってないのだ?世界でもなく、日本の関東南西部とか、かなり局所的な話である。
「どうせなら、世界を救う女神でありたいな」
その言葉に凛はじーっとわたしの顔を見ている。
「なにか付いているのか?」
「いえ、己の器について考察すべきだと思いまして」
遠回しに痛い事を言うなー。わたしの顔は世界的な女神でないとな。
「メロンよりガリ〇〇くんの顔です」
あれはなかなか美味しいがストレートに言われるとへこむのである。
「分かったよ、ガリ〇〇くんを買って帰ろう」
「安心しました、メロンにこだわられて、泣きでもされたらどうしようかと思いました」
かなり偏見のある言い回しだ。ここはわたしの凄さを認識させなければ。
ガリ〇〇くんを買ってコンビニを出ると。
「ガリ〇〇くんのイッキ食い!」
わたしはガリ〇〇くんを縦に口の中に入れてモガモガとしている。凛は冷めた様子で眺めている。
いったん、ガリ〇〇くんを抜いて息をする。もう一度、ガリ〇〇くんを入れるか迷っていると。
「寒い芸ですね、ガリ〇〇くんが可哀そうです」
あ~……。
どうせ、わたしには品がないですよ。ガリ〇〇くんを普通に食べ始めて帰路にたつ。わたしは本当に生贄なのであろうか?ここまで品の無い人生で関東南西部を救えるのか?
首を傾げながら自宅に着くのであった。
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