⑭ 四凶の巨人

 最初に巨人と対戦したのは、黒金のビスマスだった。

 ビスマスの前にいるのは、マグマと岩石が融合したような地の巨人だった。燃える目と鍾乳洞のような牙が生えた口があった。

 ビルの屋上にある、給水タンクに座っているミソラが言った。

「なんだ、魔王真緒じゃないんだ……まぁいいか、巨人の遊び相手には、ちょうどいい」

 ビスマスが、地の巨人に殴りかかる。

 ビスマスの拳を受けた地の巨人の頬からマグマが噴き出し、ビスマスの拳に付着して固まる。

 団十郎がビスマスに指示を出す。

「胸か腹を狙え」

押忍オッス!」

 ビスマスが、巨人の胸を狙って拳を打ちつけようとした。

 その時──地の巨人の胸部の一部が、柵で囲われた牢獄のように変化した。

 ビスマスの拳が止まる、牢獄を見て呟くビスマス。

「なんで……こんなところに」

 巨人の両腕が、一瞬の隙をついてビスマスの頭をつかむと、そのまま首をネジ切るように回転させた。

 回線が千切れ火花が散り、背中側に首が向いたビスマスの体は、立ったまま機能を停止した。


 ビスマスの操縦席から飛び出した茶釜団十郎が、地の巨人に向かって拳を突き出す。

「よくも、ビスマスを!」

 団十郎の体は、地の巨人が吐く高温の息を浴びて、骨も残さずに蒸発した。



 瓦礫が散乱する道路で、ショッキング・ピンク色の武者甲冑を着込み、鬼火を二個引き連れた『ショッキング・パパ』と。

 タータンチェック柄のマント、白い軍手、子供用のレインブーツを履き、目元をアメコミのヒーローのように隠した、手足が人間の変異イグアナ『パワー・グリン』の二人は。

 黒いシャドー・リザードマンを倒し続けていた。


 シャドー・リザードマンたちに両手を広げて、呼びかけるショッキング・バパ。

「おいで、パパだよ」

 ショッキング・パパは相手に父親だと思い込ませる能力がある。

 嬉しそうに近寄ってきたシャドー・リザードマンたちを、パワー・グリンが相手より1・5倍だけ上回るパワーで、殴り飛ばす。

「イグッ、イグッ」

 見事な連係プレーだった……が。

 地響きと共に、海の巨人が現れた。

 見上げる、ショッキング・パパとパワー・グリン。

「またこれは、でかいのが……おいで、パパだ」

 ショッキング・パパが言い終わる前に海の巨人の足が二人を踏みつけ。

 溶解水に満ちた海の巨人の体の中で、甲冑とレインブーツと目元を隠すマスクを残して……二人は溶けて消えた。


 

 宇宙植物に、怪人姿で巨大化した荒船・ガーネットが、十文字槍で苦戦しながら斬りつけていた。

「瑠璃子さん、遅いですね……宇宙植物に一発かましてもらわないと。わたし一人ではムリです」

 瑠璃子の屁は森も枯らす、その瑠璃子は高エネルギー反応をキャッチしたから、少し寄り道をしてから合流すると荒船に告げていた。


 苦戦する荒船・ガーネットの体に植物竜の首が巻きつき、荒船の体が空中に浮かぶ。

 十文字槍の刃先がついに折れる。

(ここまでですか……真緒さま申しワケありません……力になれなくて)

 荒船が絶望した時、宇宙植物に向かって歩む、一人のバックパッカーを見た。

「魔王さま!? 危険です! 離れてください!」

「大丈夫……接し方が間違っているぞ荒船、その方向だと何も解決しない」

 魔王ダソは、優しく宇宙植物の幹に触れて語りかける。

「もう、大丈夫だ……怯えなくていい、怖かったんだろう。ワケもわからない場所でいきなり発芽して……不安だよね、怖いよね、もう大丈夫だよ」

 魔王の声に応じるように、宇宙植物が流れる虹色の大樹へと変わっていく。


 荒船を捕らえていた黒い竜蔓が拡散するように消滅して、人間サイズの執事にもどった荒船・ガーネットが着地したる。

 各所に出没していたシャドー・リザードマンも、宇宙植物の変化で消滅していく。

 宇宙植物樹に、美しい花が咲き乱れる。

 魔王の隣に立ち、一緒に満開の花を見上げる荒船が言った。

「お帰りなさいませ魔王さま、見事な花樹でありますな」

「人の心を癒す、無害な植物が本来の姿なのだ……いつも、真緒の世話をしてくれて、ありがとう……感謝している」

 魔王は、閃光王女狐狸姫の巨大垂れ幕が吊られた、ビルの方角を見て呟いた。

「わたしが、できるのはココまでだ……後は頼むぞ真緒」



 首が反対側を向いて地面に倒れている、ビスマスを眺めながらミソラが呟く。

「魔王真緒なかなか来ないな……退屈だ、他の巨人の様子も見てくるか。天の巨人が少し不利のようだな」

 フワッと空中に浮かんだミソラは、天の巨人がいる場所へと飛んだ。


 天の巨人には、ウツボギラス・シアンとラッコゴン・マゼンタのラッコ美。

 それと、極彩色の翼と飾り尾羽を持つ、天使の青賀エルがいた。

 鳥頭で羽毛で覆われたような模様がある、天の巨人は、エルが巨大化させた、ノコギリリングの光輪で片方の翼を切断されて地面に落とされ。


 シアンが発生させた雨雲からの落雷攻撃と、ラッコ美が作り出す人工太陽の火球攻撃が天の巨人に続く。

 次々と火球を天の巨人に、ぶつけているラッコ美が言った。

「シアンさん、なんだかいけそうです! 巨人弱ってきています!」

「油断するな、勝利を確信するにはまだ……」

 シアンの言葉が途切れる。

「シアンさん?」


 シアンを見たラッコ美は、シアンの体が三つに切断されて、崩れ落ちるのを見た。

「シアンさん!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 悲鳴を発したラッコ美の体も、巨大なノコギリ状の光輪に縦に切断されて、左右に体が分かれて倒れる。

 シアンとラッコ美を切断した光輪は、縮むと青賀エルの手元にもどって光りの粒子になって消えた。


 目に自我の光りを失い、操られているような視線をした青賀エルから。

 少し離れた位置に立った、ワスレナ・ミソラが言った。

「天使は純心だから脳も操りやすい……さあ、自分の命を自分で断て」

 エルは光りの粒子を集めて作り出した大剣の剣先を、自分の胸に近づけると、宇宙邪神の命令に従って自分の胸を貫き……大剣と一緒に光りの粒子になって消えた。 



 ショッキング・パパとパワー・グリンを溶かした、海の巨人に向かって紺碧のテイルレスの胸からオッパイミサイルが飛ぶ。

「Dカップミサイル!」

 テイルレスから発射されたミサイルは、すべて海の巨人の体内で溶けて消えていく。

「こうなったら、あの方法しかないな」

 テイルレスは、海の巨人の中に水溜まりから瞬間移動する。

 ゼリーに包まれたようになったテイルレスが、両腕を巨人から突き出して、自分の体を抱き締めているようなポーズをした。

「捕まえた、倒せないなら離れた場所へ、このまま地球の裏側に一緒に移動する……あたしが溶けるのが先か、地球の裏側に到着するのが先か勝負!」

 溶けて内部メカが見えはじめた体でテイルレスは、海の巨人抱き締め……その場から瞬間移動をして消えた。



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