⑤奪われる四大宝珠
【海中神殿】──等身大のサザエの中にこもった、海中人の『青潮ホヤ』は、サザエの中から突出させた
「この、海の宝珠は海中人の名にかけて守らなければならない……天界を襲ったヤツは、きっとこの海の宝珠も狙ってくる……その時は頼むぞ、サンゴ」
青潮ホヤのサザエに付着しているイソギンチャクから、水着姿の上半身を覗かせている、海中抜刀術の使い手『魚斬サンゴ』は白木の刀を握りしめながら。
「御意」と、言った。
「妹のシャコも、一緒に宝珠を守って戦うと言ってくれたが。危険な目に会わせたくなかったから……」
ホヤは言葉を続ける前に怒りでワナワナと震え、サザエの突起から泡を出しながら言った。
「妹をたぶらかす、地上のフナムシ野郎にはムカつくが……魔王真緒のところに避難するように言ってある」
次々と神殿近くに集結する、海洋の巨大生物たち。その中には、暴君の顔をしたオニヒトデの怪獣『鬼崎ネロ』もいた。
クラーケン、レヴィアタン、大海蛇、化けハマグリ、海坊主、島エイ、イクチ、古代巨大ザメ、海竜モササウルス──怪獣・幻獣・未確認生物・妖怪の類いまでホヤの一声で宝珠を守るために集結した。
海の中が慌ただしくなり、怯えて逃げてくる魚群が神殿を通過していく。
「来るぞ! 天界から連絡があった、宇宙邪神が!」
海中を、高速で泳いで向かってくるワスレナ・ミソラの姿があった、海中で停止して浮かんだミソラが言った。
「たいした歓迎会だな……パーティーのご馳走はどこだ?」
ホヤの号令で、ミソラに襲いかかる巨大生物たち。
ミソラが軽く手を動かしただけで海流が渦を巻き、巨大生物たちを呑み込んでバラバラにミキサーする。
ミソラは何事も無かったように、海中神殿に近づいてきた。
「海から出ていけ! 宇宙邪神!」
青潮ホヤがサザエから発射した、口先が尖った魚のダツ魚雷を、ミソラは軽く体を反らしてかわすと。
ダツ魚雷は海中で方向転換して、ミソラの背中を狙う。
泳いできたダツたちを片手でまとめてつかんだミソラが、握った数匹のダツをホヤに向かって投げ返す。
「落とし物は、持ち主に返さないとね」
ダツはホヤの入っているサザエを、弾丸のように貫通した。
貫通した穴から体液が海中に染み出て、ホヤの呻く声が聞こえた。
「ぐッ……ぐあぁッ」
「ホヤさま!? よくもホヤさまを!」
魚斬サンゴが、抜刀の構えに入った、コンマ数秒前に。
ミソラの手から見えない刃物が飛んで、魚斬サンゴのイソギンチャクが付着している箇所のサザエが斜めに切断され。
サンゴは強制的にホヤと分断させられる。
「ホヤさまぁぁぁ!」
斜めに切断された、サザエの中から絶命して、仰向けのポーズで出てきた。
神話風な格好をした青年の姿を、愕然と砂海底で眺めるサンゴの体に。
ミソラがサンゴの周囲に発生させた超深海の水圧がかかる。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」
海中人は深海人とは、生息環境が異なる。
海中人の魚斬サンゴの体は、深海生息区域の水圧には耐えられない。
白刃を一回も抜くコトもなく、ミソラが生み出した超深海の水圧に押し潰されて……魚斬サンゴは死んだ。
海中神殿の祭壇に祀られている、海の宝珠を奪うミソラ。
その時──岩陰に潜んでいた『青潮シャコ』が飛び出してきて、ミソラに向かってボクシンググロブから水中パンチを、近距離から繰り出した。
「よくも、ホヤお兄ちゃんを! 海の宝珠を返せ! マリンスノーギャラクティカ!」
シャコが放った渾身の一撃を、水の壁で相殺したミソラの広げた手が、
シャコの頭部に気泡を発生させる。
空気のカプセルを被せられた、シャコはやがて苦しそうに悶えはじめた。
「があぁ、息が……できない……があぁ」
海中人の青潮シャコは、海水の中でしか呼吸ができない。
兄のホヤに続いて、妹のシャコまでミソラの魔手に……そう思われた時。
銛の攻撃で、シャコからミソラを遠ざける。
銛の連続突きをかわしながらミソラが言った。
「どうして、海の者はこうも往生際が悪いのか……」
海中大岩の陰から現れた女性型の巨大ロボット『紺碧のテイルレス』が、気泡カプセルを被せられ苦しんでいるシャコを保護する。
コ・コアは視線でテイルレスにシャコを連れて逃げるように伝え、うなづいたテイルレスは両手でシャコを包み込むと、水中瞬間移動をしてその場から消えた。
親友のシャコが助けられたのを確認して、安堵したコ・コアの首に。ミソラが邪神の神力で操る沈没船のイカリの鎖が巻きつく。
「ごぼっ」
コ・コアの口から漏れる泡、ミソラが言った。
「少しばかり身体能力が高い地上人か……海溝の中では、どこまで生きていられるのかな? 地上人が海中人に急激進化できるかの実験だ」
コ・コアの体はイカリに引っ張られるように、深く暗い海溝に沈んでいった。
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