第三章・陰キャラの宇宙キノコ娘とデスボイスの風神姫と天才ハムスターの王女
①宇宙植物竜ドリャーの娘
マオマオくんたちが暮らす【裏地球】を望む、宇宙空間で一匹の宇宙植物竜が、目前の小惑星の上で膝抱え座りをして裏地球を眺めている。片目を前髪で隠した高校生年齢の少女に向かって訊ねた。
「行くのか……裏地球に」
「うん」
少女の名前は『
キュロットスカートを穿いた螺魅は立ち上がると、ふわっと小惑星から離れて裏地球へと向かう。
別の小惑星の上に座っていた、男子高校生年齢の少年──宇宙邪神の『ワスレナ・ミソラ』が横を飛んでいく螺魅に訊ねる。
「やっぱり、地球を胞子で埋め尽くして滅ぼすの?」
「それは裏地球の住人次第……あたしに邪険な接し方をしたら。菌糸を広げて滅ぼす」
「そっか」
ミソラは、それ以上は何も言わなかった。
地球に向かう螺魅のスピードアップする。螺魅の体が種の殻のようなモノに包まれ。
隕石化した螺魅は裏地球に落下した。
テレビのニュースで、数週間前に山中に落下して回収された隕石が、博物館に特別展示されるコトが決まったと報道された。
博物館で公開前のケースに入った隕石の前で、レポーターが隕石を指差して言った。
《見てください、人間一人がすっぽり入りそうなくらいの大きさをした、ヒマワリの種みたいな形をした隕石です》
魔王城の食堂で、閃光王女狐狸姫の光るパジャマを着たまま、焦げ目で狐狸姫のイラストが描かれた朝食のトーストに、狐狸姫のジャムを塗りながらテレビのニュースを見ている魔王真緒の視線は、隕石一般公開のニュース画面下にテロップで流れている。
『アニメ閃光王女狐狸姫劇場最新作~風の森の風姫~の声優オーディションで主役の風神姫に選ばれたのは謎の新人声優?』の文字の方を眺めていた。
その頃──店に住み着いたイタズラ好きな妖精が店名を『緋色亭』や『緋色軒』に変えて楽しんでいる店に店内では。料理の仕込みが終わり椅子に座って休憩しているザ・ステンこと極神抂介が、ギョーザの具を皮に包んで自家製ギョーザを作っている、探偵助手の緋色に思い出を語っていた。
「覚えているか緋色、宇宙空間でバトルスーツの宇宙探偵ザ・ステン姿で、相棒の『宇宙植物竜ドリャー』の頭に乗って宇宙を進む勇姿は圧巻だったなぁ」
自家製ギョーザを作りながら緋色が言った。
「あのさぁ、今さらこんなコトを言うのもなんだけれど……ドリャーとは距離を保った方が良くない、あの宇宙植物竜にはあまり近づかない方が」
「どうしてだ?」
「抂介は気づいていなかったけれど、アイツ頭に乗った抂介のバトルスーツの足裏から根を伸ばして、抂介の養分吸っていたわよ」
「そんなワケあるか!」
「本当だって、その証拠に抂介、ドリャーの頭に乗って出撃するたびに痩せ衰えていったじゃない……アイツ、最後の方になると鼻先に花のツボミみたいなの生えていたし」
「う……っ、言われてみればそんな気もしてきた」
抂介と緋色が、そんな会話をしていると。店に天才ハムスターの王女『鉛谷ズ子』と、ケットシーの恋人で白猫の『フレッシュ三世』がやって来た。
ズ子が言った。
「朝食タイムには、まだ少し早いでチュか? 軽く食事をしたいでチュ」
抂介が、シッシッと追い払う仕種をする。
「ネズミやネコに食わせる飯はねぇ」
「なんでちゅうって! 脳ミソすかすかの、オンボロ宇宙探偵には言われたくないでチュ!」
「誰が脳ミソすかすかだ!」
「叩いてみれば、わかるでチュ」
椅子から立ち上がった緋色が仲裁に入る。
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。抂介お客さんに失礼よ……簡単なモノなら作れるけれど、それでいい?」
「それでいいでチュ、緋色は優しいでチュね……心を腐らせる人間のリストから緋色は外すでチュ」
「そりゃどうも、ありがとう……好きな席に座って待っていて、すぐに作るから」
緋色が厨房に入り、テーブルについたズ子は横を向いている抂介に、アッカンベーの舌を出した。
ズ子が、厨房で調理をしている緋色に言った。
「なんか隕石公開の話題で、盛り上がっているでチュけれど……数年前に
中華鍋から、調理した料理を皿に移しながら緋色が答える。
「なんでも、オークションで落札されて『紺碧のテイルレス』の体の中に入っているそうよ……だから、テイルレスは自由に水から水へ移動できるのね」
緋色はラジオから流れてきた、劇場版閃光王女狐狸姫~風の森の風姫~のテーマソングを聞きながら、料理をズ子とフレッシュ三世がいるテーブルへ運んだ。
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