第3話 シェアの話

 俺の幼馴染はよく俺が食べている食べ物を欲しがる

「あ、チョコボールだ。良いなー」

「いくつかいるか?」

「良いの? やったー!」

 別にそんなやり取りは珍しくはなかった。

「おお、その唐揚げさん、期間限定の奴?いっこちょーだい!」

「別にいいぞ、ほれ口開けろ」

「あーん……、んーウマー!」

 俺もいつだって適当に口に放り込んできてやった。別に男女であるということも気にしたことはなかった。

 ……だが今回のは許してはいけないのではないだろうか?

「あ、いいなー。……一つくれたりしない?」

「ちょっと迷ったってことは貰えるって思ってないだろ……」

 ――流石に雪見を分けるわけにはいかない。そもそもこれの一つちょうだいは禁忌だろう。

「えー、良いじゃんケチー」

 頬を膨らませ抗議する幼馴染。可愛いが致し方ない、これを分けることは禁じられているんだ。古事記にもそう書いてる。

 けどまあ――

「二つも食う気分じゃないし、一個やるわ」

 そう、これは気分の問題だ。

 決してこいつならいいかとか思ったわけじゃない。

 だがこいつはどう捉えたのか分からないが、嬉しそうに笑うと「いただきー!」と上機嫌で食いつく。

 なんかこう、餌付けしている気分というか小動物みたいだな。

「ふふっ」

「何だよ急に笑い出して」

「いや、やっぱりキミは優しいなって」

 その笑顔を見て、どうも気恥ずかしくなった俺はぶっきらぼうに「そうかよ」と答えることしかできなかった。

「いやーしかし不思議だよね」

「何がだよ」

「なんで同じ二つセットでも、雪見は貰えなくて〇ピコは貰えるんだろうね」

「…………知らね」

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