『王子さまと結婚したいお姫さま』

 昔むかし、あるところにそれはそれは、きれいなお姫さまがいました。お姫さまはとても美しかったので、あちこちの国の王子様から結婚を申し込むお手紙がきました。けれど、一目お姫さまを見た王子様はみな、結婚を取りやめてしまいます。


 それは、お姫さまの顔はとても美しいのに、着ているドレスがボロボロだったからでした。お気に入りだというドレスは、もう何年も新しいものにしていません。

 ある日のことです。近くの国でも美しいと評判の王子さまがお姫さまに会いにやってきました。お姫さまは、王子さまを一目みて王子様と結婚したいと思いました。


 しかし、王子さまは絶対にお姫さまと結婚したくないと言い張ります。ドレスを変えてもらわないと、絶対に嫌だというのです。

 お姫さまは、仕方なく王子さまお気に入りのドレスを身に着けて、改めて王子さまに会いにいきました。けれど、王子さまは、絶対に結婚しないと言いました。

 お姫さまの髪型が気に入らない。今の最先端のファッションにしてこないと嫌だと言うのです。王子さまが好きなお姫さまは、仕方なく王子さま好みの髪型にしました。

 それでも、王子さまは絶対に嫌だと言いました。お姫さまの性格が気に入らないというのです。このお姫さまは、外に出てたくさん遊びたい性格でした。けれど、王子さまは、お姫さまは部屋にこもって、本でも読んでいてほしいと言うのです。

 

 ここでお姫さまは、はっと気づきました。私は王子さまと結婚したい。だけど、性格を無理矢理変えてまで、一緒になるべき人かしら。

 服装をきれいに整えた時期から、お姫さまは今まで以上にたくさんの人たちから求婚され、そして今までは会えば断られていた結婚も、お姫さまさえよければぜひ、進めさせてくださいと言われるほどになっていたのです。


 お姫さまは、最初好きになった王子さまを諦めました。そしてその王子さまに、こう手紙を書きました。


『あなたと結婚したくて、あなた好みの姫になろうといたしました。髪型を変え、服装を直しました。けれど、あなたは私の性格まで変えろとおっしゃいます。そこで気づきました。私が本当に結婚すべきは、あるがままの私を受け入れてくれる、特に性格を受け入れてくれる人であると。それに気づかせてくれたあなたには、感謝しています。よい人生を』


 そうして、お姫さまは彼女の性格を気に入ってくれた王子と結婚しましたとさ。

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