魔法にも、できないことがある
「魔法でも、解決できないことってたくさんあるんだろうね」
わたしの言った言葉に、桐谷くんが頷く。
「何に頼っても、解決できないことなんていっぱいあるだろうよ。それに、最終的には本人が変わろうとしないと変われない場合もあるし、環境が変わらないと何も変わらないことだってあるはずだ」
「そうだよね」
「オレたちができるのは、あくまできっかけづくりに過ぎない。オレたちの力で他人の問題を百パーセント解決できるなんて考えてたら、それは魔法使い失格だ」
桐谷くんの言葉を聞いて、悟くんのことが頭に浮かんだ。その時だった。店のドアがいきおいよく開けられた音がした。黒松さんだった。
「黒松さん!?」
「どうしてここに」
わたしと桐谷くんが動揺していると、黒松さんはわたしの目を見て言った。
「今日、わたくしが言ったことを覚えています?」
「えっと……、すべての問題が魔法で解決できるってわけじゃないってお話のことですよね。今まさに、そういったお客さんを相手にしたところです」
わたしが言うと、黒松さんは少し心配そうな顔をした。
「そうでしたか。大切なのは、お客さんの心に寄り添うこと。その人の問題について一生懸命考えてあげることだと思いますわ」
そういえば、桐谷くんも前にそう言ってたような気がする。
「あ、これは啓真さんと悟さんのご両親から聞かされた言葉ですわ。わたくし、お二人の家によく遊びに行ってその話を聞かされたもので」
ああなるほど、黒松さんと桐谷くん兄弟は幼馴染みたいな感じなのかな。一人で納得していると、黒松さんが身を乗り出して言った。
「それよりも! 問題が起きましたの」
「問題?」
「本日までにこちらが回収できていたわたあめの一つが……消失しましたの」
「わたあめが消えた! 盗まれたってことですか!?」
わたしが言うと、黒松さんは首をひねる。
「このわたあめはそもそも、魔法使いかその見習い、またはその見習いの相棒などにしか見えないものです。それが盗まれるということは考えにくいかと……」
「お前らが盗んだんだろ!?」
そう声が響いた。三人が声をした方を振り返ると、そこには悟くんが立っていた。
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