『誰が悪いのか』

 その世界では、たくさんの動物たちが暮らしていました。一匹のイヌとネコが仲良くなりました。彼らは毎日のように遊び、お話をしました。きっといつまでもこんな関係が続いていくのだろう、そう二匹は思っていました。

 ある日のこと。イヌは別のイヌと行動を共にするようになりました。ネコはとても悲しくなりました。でもある日、その別のイヌはネコと行動を共にするようになったのです。ネコは、親友だったイヌのことが心配になって彼に声をかけました。けれど、親友だったイヌは、ネコに牙をむいて言いました。


「お前なんか、親友じゃない。二度と僕の前に姿を現さないでくれ」


 イヌは、何かあると全てネコのせいにしました。イヌの言う事を信じた周りの動物たちは、ネコから離れていってしまいました。でも、一羽の鳥とうさぎだけは違いました。彼らは、ネコが悪くないことを知っていたからです。

 ネコは、周りの動物たちを信じられなくなっていきました。けれど、鳥とうさぎは、ネコのことを信じ続けました。そんなある日のことです。イヌがまた、悪さをしました。みんなが楽しみにしていたおやつを、イヌが一人占めして食べてしまったのです。イヌは、いつものようにそれをネコの責任にしようとしました。


 でも今回は、そううまくはいきませんでした。鳥は木の上から、イヌの悪さを見ていました。うさぎは、おやつのあった場所に落ちていたイヌの毛を拾っておきました。そして、イヌがネコのせいにしようとしたとき、鳥が木から降りてきて、周りの動物たちに言いました。


「このイヌは嘘を言ってるんだよ! おやつを食べたのはイヌで、ネコじゃない。それに今までやってきたこと、全部イヌがやったことさ」

「これがその証拠さ!」


 うさぎは、イヌが落としていった毛をみんなに見せました。


「僕たちは、片方の意見しか聞いていない。イヌの言葉しか聞いていない。きみたちは、ちゃんとネコの意見も聞いたんだよね。だから、離れていったんだよね!?」


 うさぎの言葉に、誰も何も言い返せませんでした。ネコは言いました。


「もういいよ、全部僕のせいで……」


 それを聞いて、周りの動物たちは考えを改めました。でも周りの動物たちは今度は、イヌに対して、今までネコにしてきたことをするようになってしまったのです。


 その周りの動物たちを止めたのは、イヌに見放されたネコでした。


「別の誰かに同じことをしているんじゃ、意味がないんだ。誰も悪くないんだ」


 そう言われて、イヌはネコに謝りました。


「僕が間違っていた。あの子に好かれたかったのに、あの子は君のことが好きだって言ったんだ。だから、ちょっといじわるしてやろうと思ったら、こんなことに……」


「分かってくれたなら、いいんだ。もう一度、やり直そう」


 こうしてイヌとネコは元通り、仲良しに戻りました。その様子をうさぎと鳥は笑って見守っていました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る