その日の夜。
その日の夜。わたしは自分の部屋でひたすらに、机に向かっていた。晩御飯を食べて、お風呂にも既に入ってる。寝る準備も完璧の状態。
部屋のドアをノックする音がして、お母さんの顔がのぞいた。
「ゆめ、宿題は終わったの……って、え!?」
お母さん、とってもおどろく。そうわたし最近、まともに勉強机に座ってたことがなかったから。宿題も朝少し早く起きて終わらせたりもしていたし。とにかく、wたしが勉強机に向かっていることは、今までで考えると珍しいと言っていい。
「宿題なら既に終わらせてる」
「じゃあ、一体何を一生懸命……」
「物語を書いてるの」
言ってから、しまったとわたしは口を押える。そうだよ、加奈子や桐谷くん、おじいちゃんおばあちゃん以外には内緒にしてるんだった。
そう思ったけど、もう遅い。お母さんは部屋のドアを閉めると、私の方へ歩いてきた。ああ、問い詰められる。そう思ったけど。お母さんはとても優しい笑顔を浮かべていたんだ。
「そう、あなたも物語を書くようになったのね」
そして、机の横に置いてあるノートの内容を見てさらに言った。
「小説新人賞に応募してみたいのね?」
「うん……」
わたしが机の上に出していたノートには、インターネットで調べた小説の新人賞の種類と作品の応募締め切りの一覧を書き写したページが開いてあった。
今までちゃんと調べたことがなかったからよく知らなかったけど、新人賞には子ども部門と大人部門が分かれているものもあって、子ども部門だと出版とかはできないけど、図書カードがもらえたりする。
桐谷くんと話をして、おじいちゃんの店を守るために協力するようになるまでは、こんなことは考えもしなかったんだけど。今は、誰かに読んでもらうための物語を書きたいって強く思うようになったんだ。
「何かに挑戦することは、とてもすごいことだしいいことよ」
お母さんの思ってもいない言葉に、わたしは口をぱくぱくさせた。頑張りなさいと言って、お母さんは部屋を出て行く。わたしがこうやって物語に今まで以上に力を注いでいるのは、おじいちゃんの店を守るために動き始めたことがきっかけだって伝えようかと思ったけど、それは今じゃなくてもいいやと思い直す。
今はただ、新人賞やお店に来てくれた人のために物語を作るだけだ。
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