『眠り姫の大冒険』
昔むかし、あるところに眠り姫というお姫さまがいました。眠り姫には元々、ちゃんとした名前がありました。しかしこのお姫さまは、ことあるごとに眠り始めるために、いつの間にか、眠り姫と呼ばれるようになりました。
誰かと話している最中、お勉強の最中、習い事の最中。大好きなごはんの最中でも、眠り姫は眠くなってしまいます。一生懸命起きていようと頑張るのですが、どうしても眠くなり、さいごには眠ってしまいます。
そんなお姫さまのことを、お父さんである王さまは、毎回叱りつけました。
「なぜお前はすぐに眠たくなってしまうんだ。それでは困るぞ」
「ごめんなさい」
眠り姫はそのたびに、王さまに謝り続けました。けれど、本当に困っているのは眠り姫の方です。毎日毎日、夜になると眠り姫は自分の部屋で泣きました。
どうしたら、王さまは喜んでくれるだろう。どうしたら、このすぐに眠たくなる体質を、直すことができるのだろうか、と。
眠り姫は、城の中にある図書室へ通いつめました。何度も何度も途中で寝てしまいながらも、眠り姫は一つの情報を手に入れました。
城の門を出た先にある森の奥にある湖。そこに、何でも問題を解決してくれる精霊が住んでいると、一冊の本に書いてあったのです。けれどこの森は、城の人たちからひどく恐れられている森だと聞いたことがありました。聞くところによるとこの森は、夜になるとひどい霧になり、前が見えなくなるのだというのです。
けれど、眠り姫はあきらめませんでした。このままこの城で過ごしても、眠り姫はいつまでも、眠り姫のままです。でも、森に行って湖の精霊に会うことができれば、眠り姫は変わることができるかもしれません。眠り姫は決心をかためました。
眠り姫は、城のみんなが寝静まったのを見計らって、そっと城を抜け出しました。日中よく眠くなるおかげで、夜はあまり眠たくならなかったのです。
眠り姫は森の中に入りました。すると、森の中で一匹のりすに出会いました。リスは、とてもお腹がすいているようでした。眠り姫は、持ってきた城の食料を分けてあげました。
すると、リスはしゃべり始めました。
「食べ物をありがとうございます。お礼に、道案内をしてあげましょう」
そう言うと、リスは先に立ってちょこちょこと歩き始めました。眠り姫は、リスの後を追って森の奥へと入っていきました。途中で、霧がでてきましたがリスは木に登ったり、降りたりしながら道を案内してくれました。そのおかげで、眠り姫は道に迷うことなく、進むことができました。また、リスという話し相手がいたので、静かな森を歩くのも、こわくありませんでした。
森の中を歩いて行くと、今度は小鳥が困っていました。どうやら、巣が壊れてしまったようです。眠り姫は、自分のドレスの端を破ると、巣にしいてあげました。
すると、小鳥が話し始めました。
「ありがとう、ありがとう。おかげで助かったよ。お礼に、一緒に行ってあげよう」
リス、小鳥の案内で、眠り姫は森の奥へとやってきました。眠り姫の目の前には、きれいな湖が広がっていました。水面には月が浮かび上がっています。
リスは眠り姫に向かって言いました。
「湖の精霊さんは、呼びかけないと出てきてくれません」
そう言って、精霊を呼び出す魔法の言葉を教えてくれました。眠り姫は、リスに教えてもらった通りの言葉を、湖に向かって叫びました。すると、湖から精霊が出てきました。すると今度は、小鳥が言いました。
「精霊さんは、聞きたい内容と反対の質問をしないと答えてくれないよ」
眠り姫は、小鳥に言われた通り、聞きたいことの反対の意味の質問をしました。
「精霊さん。なぜ私は時々眠くならないのでしょうか」
「おやおやキミは、とても優しい性格のようだ。よし、問題を解決してあげよう」
精霊は、眠り姫がリスと小鳥を連れているのを見て言いました。それから、眠り姫を見て言いました。
「おお、キミは呪われているね。どうやらお父さんの王さまが昔、魔女に食べものを分けてあげなかったのが、原因のようだ」
精霊は眠り姫に触れると言った。
「これでキミの問題は解決したよ。キミには勇気がある。きっと、これからはよい方向に進んで行けるはずだ」
気がつくと眠り姫は城の前にいました。外はもう、夜が明けそうになっていました。眠り姫はあわてて城の自分の部屋へと戻りました。
森の中での出来事は夢かと思われました。けれど、その日から眠り姫は、夜眠るとき以外は、急に眠ることはなくなりました。眠り姫は城を出て旅をし、旅先で出会った賢い青年と共に、様々な世界を巡り歩いたそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます