小学生書店員せんげん!
「あー、言っちゃったよ……」
わたしは机の上につっぷして、うなっちゃう。あのあと家に帰ってお母さんに小言を言われながらも、ちゃんと学校に来たんだ。
「どうしたの、ゆめ。元気ないじゃん」
ボーイッシュな服装で髪型をポニーテールにした女子。その女子の顔が、わたしの顔をのぞきこんでくる。
幼なじみの
「かなこー、お母さんが、お店閉めるって言うのー」
わたしがそう話すと、加奈子は、びっくりした顔をする。
「え、神本書店が閉店するってこと!?」
「このままだと、そうなっちゃうかもしれないんだ……」
わたしがうなだれる。すると、加奈子が言った。
「それじゃ、おばちゃんに言っちゃいなよ」
「何をー?」
「自分が本を作るから、お店を閉めないでくれってさ」
加奈子の言葉に、わたしは大きなためいきをついた。
「おばあちゃんには言ったー」
「言ったんだ」
加奈子が苦笑いする。
「だって、このままだと本当にお店が売られちゃうって思ったから……」
加奈子以外には内緒にしてるけどわたし、物語を作るのが好きなんだ。映画やアニメ、本を読むのはもちろん大好き。
作品を『わたしだったら、ここをこうするな』って考えながら見るのも好き。
そんなわたしは最近、一から物語を作るのに、ハマってる。どんな物語にしよう、とかどんな登場人物を作ろう、とか。考えるだけでワクワクが止まらない!
もちろん、おじいちゃんが作ってた物語に比べたら、へたくそだけど。でも、物語を愛する気持ちだけなら、わたしだって負けてないと思う。
「だったら、お店を守るために、ゆめが物語を作るしかないね」
「だよねぇ」
その時、ふと視線を感じた。わたしは、視線の方向へ目を向けた。斜め後ろの席。そこには、
さらさらの黒髪にすらっとした手足。色白の肌。いわゆる、イケメンだ。オマケにその辺の男子みたいに、ギャーギャーさわがない。
神本書店によく来ていて、おじいちゃんと話してるのを何度も見かけた。その彼は今、ブックカバーをつけた文庫本に目を向けている。さっきの視線は、気のせいだったのかな。
「どうしたの、ゆめ。もしかして、みとれてたとか?」
にやぁと笑う加奈子。
「ち、違うもんっ!」
そう言ってから、わたしは加奈子にこう言い切った。
「わたし、絶対おじいちゃんと同じくらい、いい物語を作るよ」
そしてかならず、おじいちゃんとおばあちゃんの大切な店を、守るんだ。
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