本屋、閉店の危機。
おじいちゃんとの思い出を思い出したのはきっと、今言われたことがきっかけ。
「神本書店ね、閉めようと思うの」
できたてあつあつの、食パンが一気に冷めたカチコチパンになったみたいに。わたしは、口に運んでいた朝ごはんを落としかけた。
お母さんの言葉はそれくらい、わたしにはショックだった。
その大事な大事な夢が今、音をたてて崩れようとしている。
おじいちゃんが天国に行ってから、まだ1年。おばあちゃん、おじいちゃんのこと思い出してまだ、時々泣いてるんだ。
それなのに、思い出のつまったあの本屋を、閉めようって言うの?
「それで、おばあちゃんとここで、一緒に暮らそうと思うの」
「……それ、おばあちゃんにはもう話したの?」
わたしの言葉に、お母さんは首を横に振った。
「まだよ。反対するにきまってるんだから」
おばあちゃんと一緒に暮らすってことは、お店を手放すってこと。そんなの、聞かなくたって分かる。
一階が本屋になってるおじいちゃんとおばあちゃんの家。それを売ってしまうってことだ。
「おじいちゃんがいないと、あの本屋はだめなの」
お母さんの言ってる意味が、わたしには理解できなかった。
「そんなの、だめだよ。あのお店は、おじいちゃんとの思い出の場所なんだよ」
気づいたらわたしは、大好きな朝ごはんを残して、家を飛び出していた。おばあちゃんの家に行かないといけないと思ったんだ。
伝えなきゃ、おばあちゃんに伝えなきゃ。頭の中には、それしかなかった。
わたしの家から歩いて十分ほどの距離におばあちゃんの家はある。わたしは走って、おばあちゃんの家に向かったんだ。
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