神本書店の店主は、小学生

工藤 流優空

不思議な書店。

 それは、わたしが幼稚園に通っている時くらいの記憶。お店のレジカウンターにおいてある椅子に、おじいちゃんと二人で座ってる。


 おじいちゃんは、一冊の本を手に持って、にこにこしてた。幼稚園児のわたしは、おじいちゃんを見上げて聞いたんだ。


「おじいちゃん、どうして神本かみもと書店には、不思議な本ばっかりあるの」


 おじいちゃんは大きな笑い声をあげる。


「ゆめ。それはね、おじいちゃんが魔法使いだからだよ」

「そんなうそ、ゆめは、だまされないもんっ」


 ぷくっと頬をふくらませたわたしに、おじいちゃんはまた笑った。


「そうかぁ、信じてくれないかぁ」

「でもゆめ、この本屋さんも、おじいちゃんも大好き」


 そう言うと、おじいちゃんがすごくおどろいた顔をしたのも覚えてる。おじいちゃんはそれから優しい顔をして言ったんだ。


「ありがとうねえ、ゆめ。ゆめも、神本書店の魔法使いにきっとなれるよ」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る