夜に何が起きる?
夕食を終えた俺達は正岡さんと別れ、ロビーの椅子に三人並んで座っていた。
窓の外を見るとすでに日は沈み、真っ暗になっている。
「あー、なんて言うか……」
うまく話を切り出せない。
夕食で正岡さんから聞いた話だと、秋作さんは大学生の時に女子高生を振ったことがあるということだった。
そしてその女子高生というのが、結衣花の母・ゆかりさんと共通点がいくつも一致している。
すると結衣花が口を開いた。
「たぶん、お母さんだと思う」
結衣花は窓に映る自分の姿を見ながら、淡々と話し続けた。
「お母さんと旺飼さんが幼馴染ってことや、高校生の時に失恋したって話を聞いたことあるから、たぶん間違いないよ」
秋作さんは旺飼さんのお兄さんだ。そして旺飼さんとゆかりさんが幼馴染ということは接点もある。
どうやらこれで確定っぽいな。
楓坂は言う。
「でもそう考えると、いろいろなことの辻褄が合いますね。普通、女子高生の娘と大人の男が一緒にいるのを認めたくないもの。それを許すのはそういった経緯があったからなんでしょうね」
そしてこちらをじーっと見てから、
「特に笹宮さんは怪しさ全開ですし」
「俺、そんなに怪しくないだろ」
「鏡見ますか?」
皮肉たっぷりの言い回しだ。
確かに無愛想顔なのは認めるが……。
「くっそぉ~。言動なら絶対に楓坂の方が怪しいのに……」
「うふふ。『見た目だけ』はいいって言われますよ」
「それ、バカにされてんだろ」
さて、もうすぐ夜の八時だ。
雑談もそこそこにして、そろそろ部屋に戻ろう。
「とりあえず今日はゆっくりしよう」
「うん。ここって温泉らしいよ」
「おぉ。それはありがたい」
「女子風呂に乱入したい気持ちはわかるけど、ダメだからね」
「そんなこと想像すらしたことねえよ……」
◆
「へぇ、結構きれいだな」
予約していた部屋に入ると、綺麗な洋室だった。
広さはそこそこだが、手入れが行き届いている。
さっそく浴衣に着替えた俺は風呂に入ることにした。
「さあて、温泉か。楽しみだな」
エレベーターを使って移動し、浴場のあるフロアに降りた。
すると看板に何かが書かれている。
えーっと、アクティビティ風呂?
家族でお楽しみください……?
気になるが、イマイチ内容がわからない。
通りがかったスタッフさんに訊ねてみる。
「すみません。あのアクティビティ風呂って何ですか?」
「ああ、温水プールですよ。この時間ならライトアップもしてますよ」
「へぇ、そんなものもあるんですか」
「水着の貸し出しもやってますから、ぜひお試しください」
夜の温水プールで、しかもライトアップ。
なんというパリピ体験だ。
これはぜひとも使ってみたい。
さっそく借りた水着に着替えた俺は、アクティビティ風呂に入ってみた。
「おぉ!」
ドアを開けると湯気が立ち込めるプールが広がっている。
しかもライトアップされているので幻想的な風景だ。
これはいい!
しかし、旅館っていうよりスーパー銭湯みたいだな。
……あ、そういうことか。
ここって温泉を活かして旅館とスーパー銭湯が一緒になっているんだ。なるほどね。
しかも誰もいないというのが、いい!
と、その時だった。
「……笹宮さん?」
「……楓坂?」
湯気の向こうから現れたのは、水着姿の楓坂だった。
■――あとがき――■
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次回、ナイトプールで楓坂と二人っきり!?
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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