四季岡の謎の真実
「ははは、まさかそんなことになっていたなんて。すみませんでした」
そう爽やかに笑うのは楓坂父、秋作さんだ。
メガネで優しく笑う男性の容姿はとても四十代とは思えない。
今俺達はショッピングモールへ来ている。
結衣花は紫亜を連れてショッピングモール内のリサーチに出かけ、美桜は仕事があるらしく席を外している。
そして俺と秋作さんはカフェで席について話をしていた。
「驚きましたよ。紫亜が来るはずなのに、いきなり美桜さんがくるので……」
「紫亜さんと一緒に他の四季岡のメンバーも紹介しようと思ったんですけど、失敗でしたね」
苦笑いで肩をすくめたあと、秋作さんは紅茶を一口飲んだ。
楓坂の紅茶好きは父親ゆずりというわけか。
「やっぱり紫亜や美桜さんはクリエイター集団『四季岡』のメンバーだったんですか」
「はい。今は私がリーダーなので、みんなお父さんと呼ぶんですよ」
「じゃあ、秋作さんも普段は四季岡を名乗っているんですか?」
「はい。楓坂を名乗るのはプライベートの時だけですね」
ああ、なるほど。紫亜がお父さんっていうから複雑な家庭環境なのかと心配したが、そういうことではなさそうだ。
「ほら、そろそろ見られますよ」
秋作さんに促されて視線をフロアの方へ向けると、そこでオブジェの設営が始まった。
今ショッピングモールでは『ホワイトデーフェア』を開催している。
おそらくそのシンボルとなるオブジェなのだろう。
そこには無口な美少女女子高生、美桜の姿があった。
彼女は華奢な体からは想像できないほど大きな物体を担いだり、必要な道具を用意したりと、作業員の手伝いをテキパキと行っている。
「美桜さんは何をしているんですか?」
「彼女はオブジェアートの補佐のスペシャリストなんです」
「……補佐のスペシャリスト?」
「はい。四季岡は確かにクリエイター集団ですが、全員が補佐に特化した才能を持っているんです。でも補佐の才能なんて理解してくれる人じゃないと評価してくれませんからね」
そういえば紫亜の影響力を見抜く特技もどちらかといえばサポート側のものだ。
秋作さんはさびしそうな表情で静かに目を閉じた。
「彼女達が存分に活躍できる場を作りたい。それが僕の願いなんです」
「そういうことだったんですか……。叶うといいですね」
「はい。予定ではもうすぐ……、おっと。それより、今は笹宮君たちの方ですよね」
何かを言いかけた秋作さんが途中で会話を切り、急に話を変えてきた。
ちょうどそのタイミングで、結衣花と紫亜が戻ってくる。
小学生の紫亜は小さい体で秋作さんに抱きついた。
「お父さん。だいたいわかったよ」
「そうですか。じゃあ、帰って内容をまとめましょう」
「紫亜、お姉ちゃんたちともっと遊びたいんだけど……」
「今日は二人だけにしてあげましょう。……ねっ」
「あっ、そっか。うん、わかった」
んん? 何を納得したんだ?
二人の会話を疑問に思う俺に、秋作さんは言う。
「じゃあ、リサーチ結果はまたメールします。あとコレ。ホワイトデー限定限定のアトラクションチケットです。結衣花さんと楽しんでください」
「いいんですか? 紫亜達のためじゃ……」
「いえ、これは元々二人のために用意していたものなので」
にっこりと笑う秋作さんは俺に近づいて耳打ちをしてきた。
「紫亜さんが言うには、お二人は最高に相性がいいそうですよ」
「はい!?」
「ふふふ。それでは失礼します」
ニッコリと笑った秋作さんは手を振って美桜さんがいるフロアの方へ歩いて行った。
紫亜も秋作さんの後を追うようにして行ってしまう。
少し間をおいてから無口系美少女の美桜がトコトコと小走りでやってきた。
「……あの、……さようなら」
「あ……、ああ」
小さくお辞儀をした美桜はフロアに戻り、秋作さんたちと合流するとそのまま別の場所へと行ってしまった。
たぶん、このまま帰るのだろう。
俺はさっきまで紫亜の相手をしていた結衣花に話しかける。
「紫亜を任せっきりにして悪かったな」
「ううん。楽しかったから」
「なにしてたんだ?」
「普通にショッピングモールの中を歩いていただけ。特別なことはなかったけど」
へぇ、たったそれだけで流行の変化を理解できるのか。
影響力を見抜く力ねぇ……。地味だが、結構すごいよな。
「紫亜とどんな話をしていたんだ?」
「……それが……うーんと……。教えない」
「なんだよ。いいだろ、ちょっとくらい」
「私……、お兄さんとまだそこまでの関係じゃないもん」
「はぁ?」
なんだよ……。気になるじゃないか。
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・♡応援、とても励みになっています。
次回、ホワイトデーアトラクションはラブコメにて!
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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