四季岡美桜
艶のある長い髪に穏やかな瞳。
華奢な体躯と雪のように白い肌。
見た目の年齢は結衣花と同じか少し下のように見える。
絵にかいたような美少女は
今、俺は玄関先にいる。
今日は紫亜を連れてショッピングモールへ出かける予定だったのだが、なぜか知らない美少女がやってきたのだ。
廊下を見渡しても紫亜の姿はないが、彼女は紫亜と同じ四季岡の苗字。たぶん関係者なのだろうが……。
「どうしたの、お兄さん」
戸惑っていた時、リビングにいた結衣花がこちらにやってきた。
「いや……、なんか全く知らない女の子がやってきた」
「さっきチラッと聞こえたけど、四季岡って言っていたから紫亜ちゃんのお姉さんとかじゃない?」
「いや、しかしだな……」
普通ならそう思うだろう。
だが彼女は苗字を名乗る時に言い直している。たぶん偽名だ。
そういえば音水に四季岡について聞いた時、クリエイター集団『四季岡』というメンバーがいて、その人達は自分のことを四季岡と名乗ると言っていたっけ。
だが、彼女や紫亜がそのメンバーという証拠はどこにもない。
とりあえず、探りを入れてみるか。
「すみません、紫亜のお姉さんでしょうか?」
「えぇっと……。……ぁ。……」
美桜は小さな声で言葉にならない返事をすると、そのまま下を向いて黙ってしまった。
時折、上目遣いで俺を見てくるが、やはりすぐに視線を下に向ける。
「……全然、しゃべってくれないんだけど」
「無口キャラだね」
やばいな。今までにないタイプの子だ。
俺の周りにはなぜか個性的というか強烈な女性が集まってくるんだが、無口キャラは初めてだった。
すると美桜はぼそぼそと呟いていた。
「え? なに?」
「……」
「んんん?」
なに言ってるのか全然聞こえん。
しかたがないので顔を近づける。すると、
「はふぁ!?」
美桜は顔を真っ赤にして仰け反り、そのまま廊下の柱のところまで逃げてしまった。
驚かせてしまったのは悪いが、距離を取り過ぎじゃね?
「……なあ、結衣花。俺、なにかしたか?」
「存在自体に危険を感じたんじゃない?」
「俺は無害だろ」
「どうかなぁ。お兄さん、胸の小さい子が好きみたいだし」
フラットテンションで定評のある結衣花が、急にぷいっと拗ねるように横を見る。
あれ? これってもしかして……。
「なに? もしかして怒ってるのか?」
「怒ってないけど、お兄さんの好みってスレンダー系でしょ。下心が伝わったんじゃないかなぁと思って」
「俺、自分の好みなんて話したことないんだけど」
「つーん」
「やっぱり怒ってんじゃねぇか」
妬いてるのかと訊いてみたいところだが、そんなことを訊いたらよけいに怒られるだろう。
というより、俺が女子高生に手を出すわけがないだろ。
なにを拗ねてるんだ。
「あのな、自慢じゃないが生まれつきのこの無愛想顔だぞ。あんないたいけな美少女が俺と仲良くなると思うか?」
「私もいたいけだけどね」
「だったら、もう俺をいじるのはなしな」
「なに言ってるの? お兄さんからいじられ要素を抜いたら、ただのオジサンだよ?」
「俺の存在、悲しすぎないか?」
だが、こうして生意気なセリフを言うということは、そこまで怒っていないようだ。
結衣花が本気で怒ったら、「私、帰る」とかいいそうだし。
「どっちにしても、今はあの
「とか言って口説くつもりとか?」
「するか」
……と、その時、美桜が俺の服をくいくいと引っ張った。
つーか、いつのまに近づいたんだ。
まったく気配を感じなかったぞ。
彼女は小さな声で言う。
「……私……いいよ」
「なにを!?」
いやいやいや、なに誤解を増幅するような一言を言ってんだよ!!
すると結衣花は俺に背を向ける。
「私、帰ろうかなぁ」
「待ってくれって!」
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・♡応援、とても励みになっています。
次回、大変なことになった笹宮。どうやって切り抜ける!?
4月20日書籍発売。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます