第六章 お隣さん以上恋人未満のバレンタイン
1月13日(水曜日)おこたでレモンティー
【まえがき】
いつも『通勤電車であう女子高生~』を読んで頂き、ありがとうございます。
実は……なんと!
書籍化が決定しました!!
もう、すごく嬉しくて感激です!!
これも読者様の応援があったからこそです。
本当にありがとうございます。
◆ ―― ◆ ―― ◆
夜の九時過ぎ。
俺は自宅のリビングでテレビをのんびりと見ながら、こたつに入っていた。
そこへ楓坂が飲み物を運んでくれる。
「レモンティーです」
「ありがとう、楓坂」
マグカップに入ったレモンティーをコタツの上に置いた楓坂は、俺の隣に座った。
体をブルッと震わせた彼女を見て、俺は小さく笑う。
「最近、本当に寒いよな」
「そうですね。オコタでレモンティーなんて最高です。うふふ」
「コタツで寝るなよ。風邪ひくぞ」
「大丈夫ですよ」
よく言うぜ。今までに何度かコタツで寝そうになって、無理やり布団に運んだことがある。
仕事が絡むとポテンシャルを発揮するが、それ以外だと小学生みたいなところがあるから油断ならないぜ。
テレビでは楽しそうにタレント達がトークを繰り広げていた。
今日は刑事ドラマとバラエティー番組のどちらにしようか迷ったが、結局バラエティー番組を選んだ。
内容は栃木県の特集だ。
都道府県魅力度ランキングで最下位になったからだろう。
「俺、仕事でちょくちょく栃木県に行くけど、結構いいところだと思うんだけどな」
「あら、そうだったんですか?」
「食い物が美味しいイメージがあるんだよな。あとドライブが楽しい」
「栃木県は日光東照宮とか観光地が集まってますからね」
他にも那須高原とか紅葉の名所で有名ないろは坂など、ドライブが趣味の人間にはたまらないスポットが目白押しだ。
よく宿泊する宇都宮は餃子で有名だが、実は焼きそばも美味い。
それぞれの街に特長があるので、何度言っても飽きることがない。
レモンティーの入ったマグカップを両手で持った楓坂は、意外なことをカミングアウトした。
「実は私、茨城県の水戸出身なんです」
「マジで? 水戸黄門の街か」
「笹宮さんが想像するような古風な街じゃないですよ。国道も広いですし、コンビニがあちこちにありますから」
「へぇ~。昔の街並みが残っているのかと思ったぜ」
栃木県と茨城県は隣同士になる。
特に宇都宮市で車に乗っていると、いつのまにか茨城県に入っているということもめずらしくない。
「そういえば茨城県って昔、戦車のアニメの聖地になったところがあっただろ」
「水戸の東側の大洗町ですね」
「そうそう。俺、行ったことがないから気になってたんだよな」
「笹宮さんって、結構アニメ見てますよね」
「ふっ……。今年の新番組もチェック済みだぜ。異世界転生系はマジで面白いよな」
「ドハマりしてるじゃないですか」
大人とはいえアニメはもちろん見るさ。むしろ大人だからこそ楽しめるというものだ。
仕事でクタクタに疲れた時は、アニメを見てのんびり過ごしたいと考えるのは俺だけではないだろう。
ふと楓坂が何気なく驚きのことを言い出した。
「ちなみに大洗町の隣のひたちなか市の方へ行くと、道路を戦車が走ってましたね」
「……え、戦車が? 自動車が走る道路を?」
「はい。本当の話です」
さっき戦車のアニメの話をしたから冗談でそんなことを言ってるのか?
それはさすがにないだろ。
しかし楓坂が女神スマイルをしていないということは本当なのか?
むぅ……、わからん。しかし、興味はある。
「茨城県か……。時間ができたら向こうまで足を伸ばしてみるか」
「いいですね」
今は仕事も順調だし、普通に休日を過ごすこともできる。
さすがにバレンタインの二週間前は忙しいだろうが、それまでなら十分に余裕がある。
ドライブも楽しみたいし、ちょうどいいな。
俺はスマホを取り出して、ホテル選びサイトを表示した。
「茨城県なら宿泊か。どんな旅館がいい?」
「笹宮さんにお任せしますよ」
「……はは。そうは言っても、旅館選びって難しいんだよな」
これが結構大変なんだよな……。
旅館って価格だけで判断できないところも多いし。
情報をチェックして、ようやく一つの旅館を選ぶことができた。
「じゃあ、この温泉が……」
そう言って楓坂の方を見た時、……彼女は俺にキスをする。
柔らかい唇の感触とレモンティーの香り。
俺はすぐに何が起きたのか理解できず、ただただ驚くことしかった。
■――あとがき――■
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・♡応援、とても励みになっています。
ずっと温めていた楓坂さんルートのエピソードになります。
次回もお楽しみください。
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)
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