第34話 有給休暇編─開幕─

 十界会議が終わり数日が経つ。

 いつもの平和な異世界管理局に戻りつつある。こんな時期にも異世界に来る人がおり、そのような人々がいる以上、我々は働く。

 そんななか、マトラは上司のザックに呼ばれる。

「大事な話がある。キリのいいところで来てくれ」

 とのこと。なにかやったかなぁ。

 地獄の使者関連は完全にフォーゼさんが仕切ってるから、連絡が来るとしたらそっちなんだけど……。

「なにかやったんですか?」

 トームが訊いてくる。やっぱりそう思う?

「私が気づいてないだけでやらかしたかも」

「マトラさんはいつも完璧ムーブだと思うんですけどね」

「自覚のないミスが一番タチが悪いから嫌です」

 トームの顔を見るといつの間にかクマが目立っていることに気づく。部下の疲れにも気づかないくらい……か。

 先輩社員として情けない。こういうのカグラはどうしているのだろう?

「そういえば最近カグラさん見えませんね」

 と、トーム。確かに、いつもなら仕事抜け出してダベりにくるのに…。私は返す。

「今日は休みだそうだ」

「昨日も休みでしたよね」

 ちょっと心配だが、自分のことで手一杯である。

「さて、お喋りはここまでにして仕事をしますよ」

「はい!」

 私とトームはデスクに向き直る。

 しばらくして仕事も一区切りつくと、ザックさんに内線をかける。

 伺いますとの旨を伝えて、席を立つ。トームのガッツポーズに「ありがと」と返し、向かう。


───*──*──*───


「お、来たか」

 ザックさんは私を視認すると手招きしてくる。私は腰を低くして話しかける。

「どのようなご用件でしょうか」

「重要事項だ。これを見たほうが早い」

 そう言って目の前に出されたのはスケジュール表だ。なんだ?いろいろ予測してきたが分からなくなったぞ?

「とりあえず、結論から言うと──」

 私はスケジュール表の上部に書いてあるタイトルを見てハッとする。

 

 これは!まさか!


「マトラ、残り1ヶ月の間に2.5日分。有給を取らなきゃなんだけど…」

 私は心の中で冷や汗をダラダラとかき始める。

 完っっっ全に忘れてたぁ!!!




───────つづく

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