第33話 十界会議 ──閉会──

 その会議室の殆どの人が動こうとした。

 ホワイング局長に刃を向けるフォーゼ。

 止めようと動く、スケロク、クラップ、セバス、刀を抜くザック。マトラも一瞬遅れて動こうとしたが。

「………え?」

 その場の全員の動きが止まった。

「ちょっとマトラ、なんでアンタがそこにいんのよ」

 カグラの声に反応して、聞こえた方向を向くが。

 

「…メガネさんですよね。これ」

 よく見ると全員の席がランダムに入れ替えられていた。フォーゼのホワイングに向けたはずの刃。その切先にはクロックがいた。

「どういうおつもりで?」

「フォーゼさんが望むのはのはず。ですがこのままでは異世界そのものが壊されかねない」

「だから訓練という形で目的を果たすことにしたのです。この部屋には転移陣を仕込んであります。条件が限定的なかわりに瞬時に転移できるものです。この会議室にて、暴力など他人に危害を加える行為は不可能です」

 フォーゼはメガネと視線をぶつける。数秒の間、フォーゼが切り出す。

「目的を果たすとは?戦うことじゃないでしょう?」

「そうじゃとも、別に喧嘩するために訓練をするわけではない。目的は───」

 ホワイング局長は全員に聞こえるように言った。

「『謁見の間』への到達だ」

「謁見の間ぁ!」とクラップが片眉を上げて叫ぶ。

「謁見の間ってなんですか?」

 知らないな私はザックさんに訊いた。

「いわば、地獄のトップである閻魔の仕事場だ」

「そこに辿り着くのに正攻法では無理じゃろう。訓練と称して強行突破する」

「向こうもそれは分かってんだろ。だったら結局、衝突だな」とスケロク。

 少し考え込むように黙るフォーゼ。変形した刃を普通の手に戻す。

「閻魔になりすましている何者かによって、輪廻転生推進の流れが出来ている。そいつを炙り出さなきゃ終わりませんね」

 フォーゼ達が話してる中、マトラに小声で話しかけてきたのはカグラだ。

「ちょっとマトラ!訊いていい?」

 私が頷くとヒソヒソと訊いてくる。

「なんでわざわざ戦闘訓練なんて名目で突撃するのよ。そんなもん完全アポなしで急襲した方がよくない?」

「理由は大きく分けて二つ。一つは大っぴらに暴れても事後処理が楽になること。二つ目は異世界との戦闘訓練中ならば閻魔はもちろん仕事中、つまり“謁見の間”にいないと不自然に思われるから。偽閻魔の動きを制限するのが目的」

「なるほど、仕事中にコソコソ別場所にいたら周りの奴らからも怪しまれるものね。ありがと」

 どうやらフォーゼとホワイングの話し合いも佳境のようだ。

「大体、分かりました。確かに戦わざるおえない案件かもしれませんね。……私から条件を一ついいですか?」

「条件によるのぉ。なんじゃ?」

「今回の戦闘訓練の指揮権を私に下さい」

「それくらいは大丈夫じゃ」

 二つ返事のホワイング局長にフォーゼは腰から真っ直ぐ礼をする。

「ありがとうございます」

「頼んだぞ」

「それでは後日、日程など調整し次第ご連絡します。皆さまにも」

「よろしく頼んだぜ!」

 スケロクが景気良く叫ぶと、局長が続く。

「それでは緊急の十界会議を閉会する!次回は追って連絡する!以上!」

 これにて会議は閉会した。

 マトラは緊張がとけて席を立つと、カグラとダッシュでデスクに戻ったのだった。





──────つづく






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