第31話 異世界管理局被害報告
会議室の空気が一瞬止まる。
「まぁ」と言ってホワイングは会議を進める。
「結論から言ったワケだが、順を追って説明しよう。メガネ君」
「はい、なんでしょうか」
「地獄の使者襲撃の件について、被害状況をおさらいしよう」
「了解です。少々お待ちを」
数秒、パソコンのキーボードを叩き、マウスを操作する。
「それでは読み上げます」
「被害報告
本館の被害はほとんどの敵を渡り廊下で抑えたため無し、非戦闘員も迅速な避難で負傷すら無しです。
渡り廊下は損害こそ大きいですが使えないことはないですね。修復班が作業中です。
別棟はかなり広範囲です。転生室の数で言うと29区画が使用不可能なくらいの損害……というより崩壊です。修復班が入ってますが復旧のメドは立ってないです。
最後に一番重大であり、被害として大きい転生者についてです。死亡7162名、行方不明653名。負傷は約2万人にものぼります。行方不明は完全に想定範囲外の事態なので対応に困っているところです。関係者の話を聞くに連れ去られた可能性が高いとのこと。死亡した転生者については手続きを随時、行なってますがなんせ短期間でこの数が死亡するのは初めてなもので苦戦していますね」
報告を聞きながら、マトラはダラダラと冷や汗を流す。仕方なかったとはいえ、少なからず自分から壊したものを被害報告として出されると肝が冷える。
「ありがとう、メガネ君。では次に、今回の敵さんについてのことを──」
ホワイングは視線を走らせる。
「ザック君。頼むね」
「はい」
ザックさんは話し始める。
「私たちが対峙した主犯格は三人。
一人目 畜生道執行官・マミー
二人目 修羅道執行官・シュララ
三人目 人間道執行官・シャンテン
マミーによって操られた、もしくは唆された転生者がこちらに流れ込む形で事態が拡大、私たちは制圧にかかった次第です」
ザックは一呼吸置く。
「目的は輪廻転生の復活と言っておりました。が、真意は不明です」
そのあと、ザックさんは私と別れた後の動きを話した。次にクラップ、私、クロック、カグラと動きを各自話していく。
一通り説明した後、スケロクがお茶をすすって言う。
「結局逃したのかよ。これだけ大暴れさせといて」
「そこを責めるのは違いますよ。スケロクさん」
メガネが眼鏡を指で上げると続ける。
「もしザックさん達が地獄の使者を捕らえていたらかなり事後処理がこじれていた可能性があります。あくまで“被害を最小限に抑える”ことに目的を据えたのは正解だと思います」
しかしフォーゼは辛辣に言う。
「だとしても、もうちょっと損害を減らせなかったかなぁ」
「こらこら、フォーゼ。転生者の犠牲がこれ以上増えなかったのは、ある意味この大太刀回りのおかげじゃろうて。転生室ごと転生陣を壊すのは、ちと元気が良すぎるがのぅ」
本当にごめんなさい!!
マトラは心の中で泣きながら謝る。
ホワイングは一息つくと話し始める。
「報告が終わったところで、これからのことを話すとするかのぉ」
さらに緊張感の増す会議室。マトラの頬を汗がつたった。
─────つづく
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