第22話 異世界転生 対 輪廻転生⑥

 ここはクロックの構築した空間内。マミーは悠々と喋る。

「君の異世界は“時間”だね。この空間の時間を早めたり遅くしたり出来るってところかな。なかなか強いよねー」

「質問に答えて下さい」

「焦るなよ、外のカグラって子はなんの異世界だ?見たところ“火炎”っぽいけど」

「僕に訊いたって教えませんよ。そういう情報収集も今回のカチコミの目的でしょうから」

 マミーは「へぇ」と視線をクロックの頭から足まで巡らせる。

「君、まぁまぁ鋭いね。こっちこない?」

「お断りです。さっきも言いましたよね」

「えー、フラれちゃったぁ。マミー泣いちゃう」

「そういう演技もよして下さい」

 しかし、話しながらわかった。

 この襲撃はあくまで狼煙。こちらの戦力の確認と偵察といったところか?あまりツッコンで来ないにしても、これほどの転生者が犠牲になってるのはやりすぎでは?

「そろそろ五分。これ解かないの?」

 言われて解くのは癪だが、時間は時間だ。クロックが指を鳴らすと構築が消滅する。

「待ちくたびれたわよ。で、話は着いたかしら?」

 カグラが涼しい顔で立っている。クロックは内心、ホッとした。

「倒したんだ、アッパレ」

 これ見よがしに拍手をするマミーに、カグラは返す。

「馬鹿にしないで、少し驚いただけであの位大したことないから」

 はい、ウソ。腕部分の肘まで焦げ跡が残ってる、だいぶ火力を出したなカグラちゃん。でもここで強がったのは正解。少しでもこちらの底知れなさを与えておきたい。

「とりあえず、いろいろ見れたからいいや。ここまでとしようか」

 マミーは足元に倒れている転生者に触れると唱える。

「その命よ、汝を運び給え」

 すると転生者が光り出し転生陣が現れた。

「転生陣⁉︎逃げる気か!」

「させない!」

「アデュー、楽しかったよ二人とも」

 動き出すクロックとカグラ。しかしマミーは操作した転生者を自爆させる。散る血飛沫、マミーから目を離した一瞬でその姿は消える。

「どこ行った⁉︎」とカグラ。

 着いた血が消えて無くなる。クロックはカグラを諭す。

「落ち着いて、地獄に帰ったならもう僕らじゃどうこうできない」

「チッ!逃したか」

「それも分からない。まず、カグラちゃんは別棟に行って状況を見てきて」

「クロックは来ないの?」

「僕は連絡と上下の渡り廊下を見てくる。いまだに上層部からなんの連絡もないのが不自然だ」

「いまさら連絡もなにもなくない?」

「それにほら、ザックさんが渡り廊下を瓦礫で塞いでる。カグラさんは滞空、飛行が出来るから」

「あ、なるほど。分かったわ」

 渡り廊下を使わずに別棟に移れるってワケね。

「じゃ、また後で」

「気をつけて、敵はまだいるかも知れないので」

「おう、ありがと」

 クロックは本棟に戻り、カグラは渡り廊下を飛び降りた。




─────つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る