第20話 異世界転生 対 輪廻転生④
本館四階ホールにて避難していたトームはマトラの身を案じていた。マトラと別れた後ここに来て同期の人達と合流した。
館内放送が響き渡る。
『ただいま、カグラ・クラップ・クロックの三名が渡り廊下で交戦中。バンブレードとマトラの二名が別館へ突入、連絡が途絶えましたが侵入者と衝突している可能性が高いです』
マトラさんが前線で戦ってる!
「無事でいて下さい」
何気なく口から出てしまった言葉に、まさか返してくれる人がいるとは思わなかった。
「お姉さん、マトラの知り合いかい?」
声の主は、白髪に短髪の頑固オヤジを絵に描いたような風貌の男。いつの間に後ろにいたのか。
「後輩です、マトラさんの下で色々教えてもらっています」
「そうか、にしては恋人みてぇな目してたぞ」
わたしは自分でも分かるくらい顔を真っ赤にする。そんな恋焦がれる目をしてたかな⁉︎
「あいつにもファンができるとは成長したねぇ」
「マトラさんは無事なんでしょうか?」
「分からんがそんな簡単にくたばるやつじゃないだろ。ま、帰ってきたら労ってくれよ。あの正義バカは背負いすぎる部分があるからよ」
そう言って男は下駄をカランコロンと鳴らしながら、歩いて行った。どこへいくんだろう。
ふと気づくと、一緒にいた同期の子がわたしから少し距離を置いていた。
「どうしたの?」
「いやいや、トーム!今の人ヤバイよ!よく平気で喋れたね!」
「?先輩社員のマトラさんのことを知ってる人っぽかったから話したんだけど。というか話しかけてきたのは向こうだし」
「でも局内のNo.3!スケロクさんだよ、あの人」
「……え。」
「知らずに話してたのか、まぁそうだろうなと思ったけどトームってそういうところちょっと抜けてるから気をつけなね」
「私の“異世界武装─撥波靠腕”は攻撃を無効にするものだ。お前の発勁も、服こそ破れたけど身体は問題なし。完全に勝敗が決したと思った相手に拳を食らわすのはワケないことよ」
シュララは切れた口元をぬぐい、ガレキを持ち上げ身体を起こす。
「いいのか、バラしちゃって」
「今、言ったことを全部鵜呑みにするかどうかは君次第だ」
「あ、なるほど。そーいう感じのやつね」
シュララは内心、舌打ちをして脳みそをフル回転させていた。
手痛いカウンターを食らいたくないなら防御に徹すればいい、だが相手の攻撃をひたすらに受けるのは骨が折れる。
アイツの能力は説明通りでも納得できるが、言ったことが全容だと言う保証は無い。そう考えて慎重になれば敵の一撃を食らう可能性は高くなる。
「シュララさん?」
マトラの言葉にハッとする。なんだ?
「いいの?」
「いいのってなにが───」
マトラが足をカツカツ踏み鳴らす。視線を下に移すと「あ」と反射的に声が出てしまった。
そこには転生陣があった。弱々しく光っておりまだ使うことは出来そうだが。
「ごめんね!」
マトラは思いっきり転生陣を踏み砕いた!
シュララは今度は実際に舌打ちをして、苛立ちながら言った。
「作戦Bだ。マジめんどい」
─────つづく
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