第18話 異世界転生 対 輪廻転生②

 白い異形はカグラに組みかかる。

 クロックはカグラに近づくソイツにいち早く触れようとするが…。

「疾い!コイツっ!」

 カグラと肉弾戦を始める。爆炎で加速、そのまま回し蹴りを顔面に当てるとソイツは後ずさった。

「マジで強いな」

 かなりぶっ飛ばす勢いで蹴ったんだが、この程度かよ。

「カグR──」

「アンタの相手はこっちだよ!」

 マミーが巨大なイモムシを出すと、クロックに向かう。

 異世界付与─時の峡界。

 イモムシに触れ、動きをゆっくりにするが、途端にイモムシが破裂。中にいた操られた転生者が襲いかかる。

「チッ、くしょう!」

 イモムシが破裂した血飛沫で一瞬、視界が遮られた!転生者の剣がクロックを斬る!

 落ち着けボク!大丈夫、傷は浅いはずだ!


 異世界構築─時の現世


 空間がクロック、転生者、そしてマミーを飲み込む。

「クロック!どうすんの⁉︎」

「五分後、構築を解きます!五分です!それまでお願いします!」

「任せなさい!」

 カグラは目の前の敵に向かう。ソイツは口だけで戦いに愉悦を感じているかの如く笑う。

 空間内のマミーは落ち着いた様子で周りを観察する。

「凄いね、初めて見るよ」

「この空間ではボクの思い通りだ」

 転生者達は動きが完全に止まっている。

「とりあえず、質問に答えてもらう」

「いいよ、なんなりと」

「急に素直になりましたね」

「この状況で勝ちにいくのは難しいことぐらい判るよ。そこで止まってる奴らも混合転生で二、三人の転生者を混ぜたものさ。ちなみに外にいるのは十人以上混ぜてんだ、疲れるんだよねこれでも」

 勝ちにいくのはか。無理と断定しない感じ、やっぱ只者ではないな。

「聞きたいことは山程あります」

「五分もあるんだ、のんびりやろうよ。外の彼女が倒れないといいけどね」

 マミーは欠伸を噛み殺した。




 転生室サイド、マトラは拳を交える。

 クロスが入ったかに見えたが、かすっただけでシュララは怯まず腕を取りにかかる。

「あっぶねぇ!」

  マトラが腕を引くその一瞬に、シュララは足を払いにくる。まんまと体勢を崩すマトラ。 

 払った体勢から勢いは殺さず、ブレイクダンスのように回転しネリチャギ。

 マトラは地に着いた左手、左足に意識を集中。倒れながらも後ろに跳ぶ!

 目の前からわずか数センチ、振り落とされた足が床を砕く!マトラは転がり避けると身体を起こす。

 仮面を挟んでいたとはいえ、モロに右ストレート食らっといてこの動き。化け物か?

「少しは削れてくれないと、自信無くすよ」

「わたしは楽しいぞ」

 心底楽しそうに答えるシュララにマトラは息を吐く。

 さっき、何かが崩れる音がした。カグラ達か、はたまたザックさんがだいぶ派手に戦っている。転生陣を破壊するにはシュララを倒さなきゃなんない………か。


 事態の悪化。

 シュララの目的。

 マトラ自身の目的の未達成。


 これらからもはや、なりふり構ってられないか。他もド派手にやってることだし。

「少し気張らなきゃマズいですね」

 マトラが印を結ぶと、シュララは構える。

 腹の底からマトラは唱えた。


「異世界武装──撥波靠腕はっぱこうわん

 


─────つづく

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る