第15話 ザックザックと斬りかかる
ところ変わり、ザックとシャンテン。
「輪廻転生推進派がこっちに来るとして、閻魔はそれを許したのかよ」
「さぁ、許したんじゃない?」
この反応、無許可だな。でもそれに対してこいつの余裕はなんだ?
「異世界と地獄と天国の“三界和平”を知らねぇワケないだろ。お前らがやってんのは違反行為だぞ」
「あくまで我々が少数派なら……ね」
「なんだと?」
「異世界をウザがっている奴は結構いるよ。でも声を挙げないこの状況を打破するために騒動を起こした」
「なるほどね、同じようなバカがいると分かれば騒ぎ出す奴も増えるかもな。でもじゃあなおさら──」
「今回の騒動は早々に収束させてもらう。大事にすれば、あとが面倒だ」
「そうくるだろうと思って、このレベルが出張って来てんだよ」
「“異世界構築─不可視の五割刀”」
ザックは腰に付けた刀を持つ。居合いの構えで脚を広げ身を屈める。
異世界構築。
自分を中心に空間を創る異世界術。創られる空間は異世界を基とし、個人の嗜好や性格も強く反映される。なにより構築された空間には───。
「能力が付与されている」
「その通り、よく覚えてんな」
ザックの使う“不可視の五割刀”は視ることが出来ない。無色透明、ただただ異世界能力が付与された空間が広がる。
斬撃がシャンテンを捉えたかに見えたが、スレスレで避ける。
シャンテンはピンボールのように跳ねまくる。手当たり次第に跳ねまくる!
「これはウザいな」
シャンテンは斬撃を見て避けたのではない。速度全振りの乱反射移動。こっちの斬撃はシャンテンを狙おうにも速すぎて当たらない、対して向こうも私に当てる気はない。膠着状態を続かせるのが目的か。
「だったら─」
“異世界構築拡大”!
不可視だから境界が見えない、その代償として構築空間への出入りが自由であることと構築範囲が限定されていることが挙げられる。とりあえず離れるのが対処法としてはベターだが。
「建物ごと斬る気か?」
「それもやむなし」
斬られた天井が瓦礫となって落ちてくる。そこでシャンテンは初めて狙いに気づき。止まる。
「……渡り廊下への道を塞いだのか」
「ご名答、でも手遅れだね」
ザックは刀を抜き、異世界構築を解く。
シャンテンは混乱していた。
「いいのか?増援が来れないぞ?」
「これ以上、掻き回されるのが嫌だったんでね」
この襲撃を必要最低限の人数と最小限の被害で終わらせる。
大丈夫、マトラは強い。
ザックは自らのするべきことを再確認する。
「さて、シャンテン。悪いが、場所・人数・配置を教えてもらおうか」
今、別棟にいるのは二人だけだ。マトラは転生陣の破壊を全うするに違いない。ならば──。
「嫌だ、と言ったら?」
「少々手荒になるだろうな」
私はこの別館を押さえる。完全封鎖も視野に入れて動くか。
「“異世界付与─月下備刃”」
そう唱え、ザックは刀を抜いた。
─────つづく
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