第13話 転生の歴史
カグラは困惑し、言葉が詰まる。口を開いたのはクロックだ。
「申し訳ございません、管理長殿の訪問を知らされていなかったためとんだ無礼を。そして今の質問に関して、いくつか確認したいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
淡々と喋るクロック。こういう時に冷静なのはたのもしい。
「いいわよ。なにかしら?」
許可が出た。二人は目でコンタクトを取り、クロックが頷く。
「まず、異世界を潰すと言うのは異世界を減らすという意味で宜しいですか?」
「いえ、違うわ。異世界を根絶するという意味よ」
「異世界の存在は必要ないという事ですか?」
「ええ、そうよ」
「なぜ?」
「あなた達、この世界の仕組みがどうなっているのか知ってるわね?」
なんだ?話が見えない。
「善人は天国、悪人は地獄、寿命が残っている者は異世界に行く。異世界で残っている寿命を謳歌してから天国と地獄に行く。最近は異世界に送られる者が多いわけだが……」
「それが多すぎると?」
横槍はクロックだ。マミーは続ける。
「近年、現世の人間共は自ら命を断ったり、他人の命を終わらせたりとだいぶ荒れているからな。私達が納得できないのは、グレーゾーンの奴らの扱いについてだ」
「グレーゾーン…」
「そう、現世の法に則った善悪の裁き方はどうなのって話ね。誰しも一度や二度、嘘ぐらいはついたことあるでしょ?」
「そんなの、みんなしょっ引いてたらキリないですよ」
「地獄がその指標を示すと言ってるのよ。なにも犯罪だけが悪じゃない」
マミーと名乗った女性は揚々と続ける。
「身勝手に命を断つ者、利益を貪る者、権力を振りかざす者、えてして彼らが悪ではないと?」
「だから残った寿命分をこの異世界で過ごしてから地獄に引き渡す。それでいいじゃないですか。なぜ『異世界は要らない』なんて結論になるの?」
「残った寿命を楽しく過ごす権利があるとでも思ってんの?異世界なんて罪人を遊ばせる遊園地のくせに」
語気を強めるマミーに一瞬怯むカグラ。クロックは既に答えを出していた。
「まだ異世界ができる前、地獄では罪人達の残った寿命を使った刑罰があった。それは現世で前よりもさらに過酷な環境の下に転生させるもの……」
「あら、あなた知ってるの?だいぶ若く見えるから知らない世代だと思った」
「自分も聞き齧った程度です」
「それでも見どころはありそうね。こっち来ない?」
「遠慮しときますよ、そういう趣味は無いんで」
「ちょっと!どういうことよクロック!一から説明!」
カグラにクロックは
「“輪廻転生”、カグラさんは聞いたことないですか?」
その言葉で合点がいったカグラ。顔色の変わりようにマミーがほくそ笑む。
「まさか。目的って……」
「全ての罪に罰を与える輪廻転生の復活。今日はその狼煙を上げに来た」
マミーは構える。
「さぁ、止めてみなさい」
─────つづく
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