第12話 出揃う主犯格
マトラは走り転生室を順繰りに見ていた。
「ここか!やっと見つけた!」
明らかに他の転生室とは違う。おそらく管理局に乗り込んできた転生者達が荒らしたであろう形跡がある。
とりあえず転生陣の破壊を──。
思考がそこで途切れたのは、目の端に脚を捉えたからだった。
上段蹴り!
とっさに受ける、マトラは瞬時に間合いを取った。
「よく受けたね。さすがは局員」
「誰ですか?」
マントにフードが付いている。フードを被っており、仮面で顔も隠している。声の高さから女だと思うが、この脚力……。
「強いですね、あなた」
「アンタも良い動きだ、やりがいがある」
闘おうと踏み出す足をマトラは言葉で制す。
「待って下さい。目的はなんですか?」
「なんで話さなきゃなんないのさ、そんなこと」
「闘わなくても済むかもしれないからです」
女は動きを止め、「んん?」と首を傾げる。
よし、食いついた。
「私がここに来た目的は転生陣を破壊したいからです。あなたと闘うためではありません。もし、あなたと私の目的が拳を交えずに達成出来るのなら私はその道に尽力します。ですから…」
様子を見るが、相手はひとまず話を聞いている。
「とりあえず用件を伺いたいです。闘うのはそれからで」
フードの上から頭を掻くと、途切れ途切れに喋りだす。
「なるほど。うーん、それは申し訳ない。ホント申し訳ないが……ここで衝突せずに済む方法は無いだろうな」
「なぜ?」
「我々の目的は異世界管理局のジャック。最終的には───」
一方、カグラ&クロックのいる渡り廊下サイド。
「ドンドン来いやぁ!」
「まだ終わんないのか、これ」
迫りくる転生者達を二人で凌いでいた。
「“異世界装備─
カグラは爆炎を身にまとい転生者を殴り飛ばしていく。クロックは向かってくる転生者に片っ端から触れていく。
「“異世界付与─時の
触れられた者は止まり、それをカグラが殴る。殴る。殴る。
一定のダメージを超えた転生者はモンスターと同様に消滅していく。ただ違うのは保険に入ってる転生者は消滅後に復活する。消滅から復活には管理局での復活許可が必要なのですぐに復活するわけではない。
「これ終わった後、消滅させた転生者復活させなきゃでしょ?ヤダなぁ、めんどいなぁ」
「ぐちぐち言ってないで仕事しなさいクロック」
「はーい、わっかりましたーよー」
転生者達の動きを止め、カグラが殴りにかかる。しかし不自然さに気づいたのはクロック。
「ん、んん?」
あそこの奴ら止めたっけ?触れてない者まで止まっているような……?
違和感を気にしながら注意深く見る。と、転生者達の様子がおかしい。次々と小刻みに震えだした。ここでカグラも察知する。
「クロック!」
クロックは言葉の意図を汲み取り、瞬時に返答。
「確認しました!一旦離れます!」
その数秒後いきなりの呻き声と共に転生者達は爆散した。一人また一人と爆発して散っていく転生者達をカグラは呆然と見ていた。
「なによ………。コレ」
最後の一人が爆散すると、人が現れ高らかに笑う。
「ハッハッハッハ。ご機嫌いかが?局員の諸君!」
「だれ?」とカグラ。
「初めまして、管理局の実力者クロックさんにカグラさん。私は地獄界・畜生道執行官。名をマミーと申します」
「畜生道……執行官⁉︎」
確か地獄の幹部格の肩書きだったはず。
「どうしてここに?」
クロックも動揺している。マミーは答える。
「まずはお互い納めましょう。話はそれから」
カグラは炎を消す。クロックも下がり、カグラの横に並んだ。
マミーは不敵な笑みを浮かべ、語りかける。
「ねぇ、お二人さん。一緒に異世界を潰しませんか?」
─────つづく
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