第7話 vsサキュバス②

「“異世界転移─愚戀技巧閣ぐれんぎこうかく”」

 ザックが急ぐように指示を出す。

『トームさん、マトラのマークを追って』

『了解です!』

 景色が一変。2人は広い楼閣の内部に瞬間移動した。

「なんだ?」と戸惑う淫魔

「本来お前のステータスを奪うスキルも攻略法があるはずだ」

 マトラは印を解くと、淫魔の問いかけには無視して話し始める。

「パーティー戦ならまず防御の低い味方に攻撃させステータスをわざと低くするやり方がベターだな」

「おい」

「強いヤツが攻撃しても別の味方に攻撃してもらって、ステータスの上書きをすれば無難に倒せるはずだが。ステータスの上書きがされず蓄積されていった」

「おい!おいってば!」

「何故、蓄積されるようになったのか原因が分からないんだが、少し協力してくれないか?」

「おい!話を聞けや!」

「なんだい、サキュバス」

「なにが起こった!ここはどこだ!」

「焦っているね。まぁ、無理もないか。ここに移動してきてからステータスが使えないんだろう?」

 淫魔は図星だと言わんばかりに苦々しく顔を歪めた。

「ここは愚戀技巧閣って言う、別の異世界のエリアだ。もう使われてないエリアだけどな」

「別の異世界」

 マトラは目の前に人差し指と中指を立てる。

「確かに強いスキルだが、あくまで奪ったステータスはその異世界のみの話だ」

 ヤケになったのか、淫魔は襲いかかってくる。

「別の異世界に移動させてしまえば転生者のステータスは無効。あなたの能力もそこまで怖くない」

 マトラが腕を振るう。

「交渉決裂、残念だ。“裂” 」

 淫魔は四肢がバラバラになり、消滅していく。「クソッ!」と恨めしそうに吐き捨てるその最期に、マトラはただただ手を合わせていた。



─────つづく

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