第2話 転生手続き
「この異世界管理局では主に二つの事を行います」
マトラは人差し指を立てる。
「一つ、異世界転生届の発行」
ゆっくりと中指も立てていく。
「二つ、転生後の事を考えた準備と手続き」
俺は頷く。マトラは立てた指をしまい、目の前のパンフレットを開く。
「先ほどの受け答えからヤマノウチ様が異世界について知識があるのは分かっていますが、とりあえず順序通りに説明しますね」
マトラは胸元のポケットからペンを取り、指し棒がわりに使う。
「現世で亡くなられた方が異世界へ生まれ変わる。これを異世界転生と言います。その転生をするにあたり、手続きをするための場所がここ、異世界転生管理局となります」
現世
↓
異世界転生管理局
↓
異世界
図を書きながらマトラの説明は続く。
「亡くなられた方が一度に大勢、異世界へ雪崩れ込み異世界がパニックになるのを防いだり、転生後のトラブルを未然に回避するための手続きや説明です。ご了承下さい」
へぇ、そうなのか。パンフレットから顔を上げようとすると思わず目が止まる。
…デカいな。シャツの第三ボタンが大変そうに仕事してるぞ。
「ヤマノウチ様は現世での犯罪歴が無く、悪業もそこそこしてないので転生可能ですね」
「転生出来ないとかあるんですか?」
「犯罪歴がある者は亡くなった時点で地獄行き。転生可能でも本人が拒否した場合、そのまま天国行きですね」
異世界って天国、地獄と同列扱いなのか。初めて知ったぞ。
「それでは次に異世界での設定についてですが、ご希望はありますか」
ありますとも。
「なんでもない若者が実は知力ステータスMAXで、少ない戦力で格上を倒していくストーリーでお願いします」
「ストーリーは自分で作っていくんです。知力ステータスMAXがご希望ですね。モンスターとかが出てくるRPGスタイルの異世界でよろしいですか?」
「他にはどんなのがあるんですか?」
「ヤマノウチ様がご存知のRPGのように戦いながら冒険していく異世界はもちろん、のんびり農業をする牧場、農場の異世界。現世とほとんど変わらない世界でイケメンとしてやり直す方もいらっしゃいます」
こりゃよりどりみどりだな。
「1番人気あるのは?」
「現世と同じ世界観でオプションで“イケメン”と“催眠操作能力”をつけるセットが人気です」
なるほど、みんな思ったよりも欲望に忠実だ。
「では異世界はRPGステージ。オプションで“知力ステータスMAX”でよろしいですね」
「できれば他のステータスも高めで」
「かしこまりました」
マトラはなにか手早くメモを取る。
「次に異世界保険のご案内をさせてもらいます」
「異世界保険⁉︎」
─────つづく
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