第203話 人の不幸は蜜の味なのね!? そうなのね!?

 紅葉は抗議するピエドラを宥めると、ピエドラの変化について確認することにした。


「【分析アナライズ】」



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名前:ピエドラ  種族:ジャバウォック

年齢:15歳 性別:雄 Lv:100

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HP:1,400/1,400

MP:1,400(+850)/1,400

STR:1,400

VIT:1,500

DEX:1,300

AGI:1,400

INT:1,500

LUK:1,300

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称号:<紅葉の騎竜><暴食><不老>

スキル:【飛行フライ】【炎熱地獄 《インフェルノ》】【病毒吐息ディズィーズブレス

固有スキル:【暴食将軍グラトニージェネラル】【暴食進撃グラトニードライブ

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装備:紫騎竜の証(紅葉)

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 能力値が軒並み上昇しているので、紅葉は目を見張った。


「ピエドラ、強くなったわね」


「(`^´) ドヤッ!」


「それに、どこからどう見てもドラゴンだわ」


「☆⌒(*^∇゜)V ドヤッ!」


「迦具土、【暴食将軍グラトニージェネラル】と【暴食進撃グラトニードライブ】の効果ってわかる?」


「・・・初耳なのじゃ」


 申し訳なさそうに言う迦具土を見て、紅葉は迦具土が傷つかないようにフォローしつつ、バアルに訊ねた。


「しょうがないわ。きっと、珍しいスキルなのね。バアルさん、わかりますか?」


「答えてやるよ。【暴食将軍グラトニージェネラル】は、大きく分けて2つ効果がある。1つ目が、取り込んだものを自分の糧として有効活用する効果だ」


「中ボスを食べたから、MPが増えたんですけど、それだけじゃないってことですか?」


「おうよ。状態異常系のスキルを無効化し、受けた状態異常は【病毒吐息ディズィーズブレス】に上乗せされる。物理攻撃を無効化し、本来受けるはずだったダメージは次の一撃に上乗せされる」


「魔法攻撃はどうなりますか?」


「無効化されることはねえが、受けたダメージは次の一撃に上乗せされる」


 物理攻撃と魔法攻撃、状態異常攻撃の全てが効かない生物はこの世にほとんど存在しない。


 そんな存在がいたとしても、それは攻撃手段が皆無とかで調整されている。


 絶対無敵な存在がいれば、天界も地球も魔界も等しく危機に陥ってしまう。


「そうなんですね。2つ目の効果はなんですか?」


「ピエドラが紅葉の姉ちゃんの装備全てに融合し、ピエドラの力が紅葉の姉ちゃんに上乗せされる。【飛行フライ】が使えるようになり、ピエドラの能力値が紅葉の姉ちゃんに加算されるぜ」


「少しだけ、ルナちゃんの【憑依ディペンデンス】に似てますね」


「そう言われてみれば、似ているところもあるかもな」


 ルナの【憑依ディペンデンス】なら、全能力値の上乗せだけでなく、ルナのスキルを奏が使用できるので、同じとは言えないが似ていなくもない。


 だから、バアルは紅葉の指摘に頷いた。


「次は、【暴食進撃グラトニードライブ】の効果を教えて下さい」


「あいよ。まあ、こっちは単純だがな。ノンストップの突撃だ。相手に攻撃されようと、それを喰らいながら突撃する。喰らったもの全てがこのスキルの威力に上乗せされるぜ」


「ピエドラ、私を乗せた状態で使っちゃ駄目。これ、絶対」


「(○´・ω・`)bOK!」


 バアルの説明を聞き、自分が騎乗した状態では反動で大変な目に遭うと思い、紅葉はピエドラに指示を出した。


 ピエドラに断る理由はなく、素直に頷いた。


 バアルの説明が終わり、奏はやることを終えたから、双月島に帰ろうとした。


 ところが、そのタイミングで奏達の耳に神の声が届いた。


《これより、一部の冒険者を除き、冒険者のワールドクエストがその者に見合った形で更新されます。クエストが途中であり、報酬を受け取れなかった者については、更新後のクエスト報酬で補填されます》


 神の声が止むと、奏は嫌な予感がしてクエスト機能を使ってみた。



◆◆◆◆◆


☆個体名:高城奏のワールドクエスト☆

〇1:神の復活(クリア!)

〇2:双月島開拓(クリア!)


◆◆◆◆◆



 伊邪那美が神々に働きかける前のように、新たなクエストが準備されたのではないかとビビっていた奏だったが、いざ確認してみると杞憂に終わった。


「ふぅ、良かった」


「そりゃそうだろ。これで、奏にクエストを与えたら、与えた神が伊邪那美に睨まれるんだぜ? 奏を動かせたら、メリットは大きいかもしれんが、伊邪那美を敵にするのは釣り合わない」


「伊邪那美が俺の味方で本当に良かった。ありがとう、伊邪那美」


『どういたしましてだえ』


 狙いすませたかのように、伊邪那美の声が奏の耳に届いた。


 天界は忙しい様子だが、なんだかんだ自分の動向には注目しているのだろうと奏は判断した。


 そんな中、奏と同じタイミングでクエスト機能を見ていた紅葉がプルプルと震えていた。


「紅葉、どうした? まさか、クエストが追加されてた?」


「・・・ついに、私も奏君が通った英雄社畜のレールを進まなきゃいけないみたい」


「ようこそ、こちら側へ」


「なんて良い笑顔をしてくれるのかしら、私の仕える主は」


 奏は仲間が増えたとニッコリしていると、紅葉の顔が引きつった。


「どんなクエストなんだ?」


「モンスター討伐率100%の国を増やせ、だって」


「ファイト!」


「人の不幸は蜜の味なのね!? そうなのね!?」


「蜜だとは思ってない。それに、考えようによっては、紅葉の願いが叶うかもな」


「願い?」


「中二心をくすぐる称号の獲得。もしかしたら、<緋炎大公スカーレットデューク>を超える称号が手に入るかも」


「・・・少し、燃えて来た」


 称号の話を聞くと、紅葉の反応が前向きになった。


 その要因として、紅葉が<緋炎大公スカーレットデューク>では<不退転覇皇ドレットノート>を超えられていないと思っていることが大きい。


 <緋炎大公スカーレットデューク>には、戦闘時に全能力値が2倍になり、炎系スキルは更にその2倍の威力になる効果がある。


 それに加え、自分が受けたスキルが会得可能なものであれば、戦闘後に会得できる効果もある。


 しかし、それでも<不退転覇皇ドレットノート>には遥かに及ばない。


 奏に仕える近衛兵ロイヤルガードとして、奏と実力差が開き過ぎるのはいただけないとも思っており、紅葉は<不退転覇皇ドレットノート>に負けない称号の獲得のため、気合を入れ直した。


「じゃあ、手始めにイギリスを助けてみるわ」


「わかった。じゃあ、頑張ってくれ。【転移ワープ】」


 紅葉と別れ、奏達は双月島に帰った。


 神殿に戻った奏は、ヘラから放たれる気が出かける前よりも強くなったことに気づいた。


「バアル、気のせいじゃないよな? ヘラが復活してないか?」


「間違いなくしてるな。つーか、楓の最後のワールドクエストの内容は、まだ達成されてなかったはずだが」


「答えは簡単よ。楓のクエストの中身が更新されて、更新された内容をすぐに楓がクリアしたから復活できたの」


「と言っても、クエスト内容はほとんど一緒で、最後の内容だけ変わっただけなんですけどね」


 ヘラの説明を引き継ぐように、楓が口を開いた。


「と言うと? 楓がヘラを復活させるには、何をする必要があったんだ?」


「奏兄様と私がベストカップルであることを、ヘラにプレゼンして納得させたんです。クエストの内容が、疑り深い神器に夫婦の愛を認めさせることでした」


 クエストの内容を聞くと、バアルは首を傾げた。


「・・・俺様、2人目を作るのよりも、ヘラに夫婦愛を認めさせる方が難しいと思うんだが」


「そんなこともないわ。私が今まで観察した中で、奏が楓以外に浮気した様子が一切見られなかったから、それを正当に評価したの。奏、私は貴方が楓を生涯で唯一の妻にしたと信じた。この信用を裏切ることがないように、今後とも楓を愛しなさい」


「言われるまでもない。と言うよりも、ヘラにそうしろって言われたから、楓を愛する訳じゃない。俺は楓にプロポーズした時から、ブレることなく楓だけを妻として愛してる」


「エヘヘ。もう、奏兄様ってば・・・」


 真剣な表情のヘラに対し、奏もすぐに返事をした。


 奏の返事を聞き、楓はデレデレである。


「うん、これなら問題ないわね。あの好色猿ゼウスにも、奏の爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいだわ」


「そうか」


「ええ。本当にね。あぁ、そうそう。これから先も、楓のアドバイザーとしてここにいるからよろしくね」


「わかった。こちらこそ、よろしく頼む」


 奏とヘラは、固い握手を交わした。

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