第127話 ババァ無理すんな
朝食を取りながら、奏達と迦具土はお互いに自己紹介した。
朝食後、食器の片づけを終えてから、奏と楓がリビングに行くと、迦具土が奏に声をかけた。
『奏、お主達が火打石を持っておると聞いたが、誠か?』
「・・・あ、桜島の宝箱で出たやつか」
一瞬、何を指しているのかわからなかったが、思い当たる物が頭に浮かんだので、奏はそれを口にした。
『それを見せてほしいのじゃ』
「わかった。【
迦具土の頼みを聞いて、奏は亜空間から2つセットの黒い石を取り出した。
『おぉっ! それなのじゃ! 我の火打ち石なのじゃ! 奏、譲ってほしいのじゃ!』
「楓、譲っても良いか?」
「構いません。私達が持ってても、使い道がありませんから」
『感謝するのじゃ!』
奏は火打石を紅葉に渡した。
紅葉は火打石を受け取ると、迦具土にそれを近づけた。
火打石を吸収した途端、迦具土が輝き始めた。
シュゥゥゥッ。ピカァァァン!
《個体名:秋山紅葉のワールドクエストが、転職によって変更されました。今までにクリアした分のクエストがリセットされたため、紅葉のクエスト報酬にその分が上乗せされます》
《おめでとうございます。個体名:秋山紅葉がクエスト1-1をクリアしました。報酬として、迦具土の復活率が30%になりました》
《おめでとうございます。個体名:秋山紅葉がクエスト1-2をクリアしました。報酬として、迦具土の復活率が40%になりました》
迦具土が輝き始めてすぐに、神の声がその場に届いた。
神の声を聞き、紅葉は納得した表情で頷いた。
「まあ、そうよね。
「紅葉、ワールドクエストを確認してみれば?」
「そうね」
奏に言われ、紅葉はクエスト機能を使ってみた。
◆◆◆◆◆
☆個体名:秋山紅葉のワールドクエスト☆
〇1:神の復活
1-1.神器の願い事(達成済)
1-2.神器の神域への移動(達成済)
1-3.神器とユニーク武器契約(未達成)
◆◆◆◆◆
「私のクエストのテーマが、前の奏君と一緒で神の復活になってる」
「じゃあ、迦具土をユニーク武器にするってことか?」
「それ、次のクエストだったわ」
「悪意じゃなくて、純粋に気になるんだが、トンカチでどうやって戦うんだ? 俺の場合、バアルはバールだったから、殴って使えるサイズだったけど」
「問題はそこよね・・・」
紅葉は額に手をやった。
奏の言う通りで、神器をユニーク武器にすることは、紅葉にとって願ってもないことだ。
しかし、今の紅葉は蜻蛉切Ver.5、つまりは槍を武器にしている。
だから、武器が槍からトンカチに変わってしまえば、慣れていない戦闘スタイルを強いられてしまい、戦力ダウンは免れない。
そこに、迦具土が解決策を持ちだした。
『安心するのじゃ。我は、紅葉の槍と同化可能なのじゃ。じゃが、一旦同化してしまえば、今までのように【
「迦具土、バアルさんみたいにユニーク武器になったら、魔石とか取り込んでレベルアップできるの?」
『そんなヒューマン頼りの方法、我は想定してなかったのじゃ。そもそも、我にレベルの概念はないのじゃ』
「まっ、俺様は地球で初めてモンスターを倒した奴に、自分の運命を賭けたからな。そいつがもし、モンスターを倒してくれなかったら、一生神器のままだったぜ。奏に出会えたことは、マジで俺様にとって僥倖だった」
ドヤ顔で言い張るバアルに対し、奏はジト目を向けた。
「今思い返せば、バアルに乗せられたよなぁ」
「まあ、良いじゃねえか。奏が頑張ったから、今があるんだ。結果的にWin-Winだろ?」
「そりゃまあ、なぁ」
バアルの言っていることが、奏にとって事実であるため、奏はこれ以上何も言わなかった。
『バアルと奏が、パートナーとして相性が良かったことはわかったのじゃ。それで、紅葉はすぐに我をユニーク武器にするのかのう?』
「ちょっと待って。それなら、最後に強化してからにさせて。奏君、アモンのモンスターカード、使わせてもらうわね?」
「良いぞ」
昨日の時点で、紅葉は奏からアモンのモンスターカードを譲り受けていた。
それを使うことを念押ししてから、紅葉は収納袋に入っているエリゴスのランスを取り出した。
そして、蜻蛉切Ver.5とそれらをまとめて床に並べた。
紅葉は既に、
それゆえ、紅葉は職業の効果でLUKを高められないし、【
補助が一切ない状態で、ぶっつけ本番の合成をすることになった。
「【
カラン。
スキル名を紅葉が唱えたことで、賽子がどこからともなく現れて4の目が出て、素材群が光に包み込まれた。
その光の中で、素材群のシルエットが一体化して、十文字槍へと変わった。
光が収まると、赤と黄色を基調とした柄と白銀の刃を持つ十文字槍が姿を現した。
「【
合成結果を確かめるべく、紅葉はすぐに蜻蛉切Ver.6を調べ始めた。
見た目が大きく変わったこともあり、紅葉の期待は大きかったのだ。
確認を終えた紅葉は、ニヤッと笑った。
この兆候は、三段笑いになりがちなので、響が速やかにそれをインターセプトした。
「紅葉、演出は良いから結果だけ教えて」
「むぅ、三段笑いと結果共有はセットなのに」
「前半の需要はない」
響のコメントを聞き、紅葉はムスッとした表情で、合成によって変わったスキルについて説明し始めた。
「【
『ふむ。我が同化しても、問題なさそうじゃな。紅葉よ、もう同化して良いかのう?』
「構わないわ」
『うむ』
シュゥゥゥッ。
蜻蛉切Ver.6が迦具土に取り込まれると、迦具土の外見が炎を意識したデザインの赤い柄の十文字槍へと変わった。
《おめでとうございます。個体名:秋山紅葉がクエスト1-3をクリアしました。報酬として、迦具土の復活率が50%になりました》
《迦具土がユニーク武器になったことで、紅葉の装備スキルが大幅に変更されました。それにより、<器用貧乏>と<苦労人>が、<
《おめでとうございます。個体名:秋山紅葉がクエスト1-4をクリアしました。報酬として、<爆弾魔>が<火焔候>に上書きされました》
神の声が止むと、紅葉はカッと目を開いた。
「秋山紅葉、17歳です♡」
「ババァ無理すんな」
「ちょっと響! そこは、おいおい、でしょ!? それに、私はまだ25よ!」
<
実際、響が20歳で紅葉と5歳差なので、5歳も年上ならババァ理論を響は提唱した訳である。
だが、ちょっと待ってほしい。
この場の最年長は、紅葉ではないのだ。
この場には、バアルやヘラ、迦具土という神話に登場する存在がいる訳で、響のコメントは3柱の額に青筋を立てるには十分だった。
「響嬢ちゃん、おいたが過ぎるぜ」
「妾もまだ現役だわ」
『我だってピチピチなのじゃ』
「あうぅ、奏ちゃん、ヘルプ・・・」
やってしまったと理解した響は、奏に助けを求めて手を伸ばした。
だが、女性に年齢の話をしてはいけないことは社会人経験で十分理解していたため、奏は響から目を逸らした。
「プー、クスクス。ざまぁ」
「紅葉ェ・・・」
ここぞとばかりに、紅葉が自分を嘲笑うものだから、響は表情が引きつった。
しかし、その後小一時間程、響はバアル達に説教されたのは言うまでもない。
その間、紅葉は【
すると、蜻蛉切Ver.6の装備スキルが、迦具土の装備スキルになったことで、【
【
スキルの確認を終えると、紅葉は響が解放されるまでの間、今日の行動予定を決めるために掲示板を巡回し始めた。
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