第8章 海底ダンジョン

第73話 奏君の陰陽師コス・・・だと・・・?

 紅葉と響が従魔を手に入れた翌朝、奏達は朝食後の食休みを取っていたが、そこに神の声が鳴り響いた。


《転換日から数えて、10日目になりました。本日より、【自己鑑定ステータス】、【分析アナライズ】を使える人間に、ワールドクエストが解禁されます。クエストの詳細は、クエスト機能を確認して下さい》


「おー、ようやくあいつらも動き出したか。ったく、遅いっての」


 神殿の中では、人型になっているバアルが、動きが遅いと不敵に笑った。


「ktkr! ゲーム要素じゃん!」


「紅葉、ハウス。バアル、説明よろしく」


 紅葉を犬扱いして黙らせてから、奏はバアルに説明を求めた。


「はいよ。ワールドクエストってのは、現時点で天界に存在できるぐらいの力を残した俺様の同輩が、冒険者ごとにこう動いてほしいって用意したルートのことだ」


「それに沿って行動すれば、俺達にメリットがあると?」


「多分な。ワールドクエストの中身がどうなってるか、ここで予想するよりも実際に見た方が早いと思うぜ?」


「そりゃそうだ」


 バアルとの会話を中断し、奏はクエスト機能を試してみることにした。



◆◆◆◆◆


☆個体名:高城奏のワールドクエスト☆

〇1:神の復活

1-1.神器の捜索(達成済)

1-2.神器とユニーク武器契約(達成済)

1-3.神器のスキル使用(達成済)

1-4.神器のレベルアップその1(達成済)

1-5.神器のレベルアップその2(達成済)

1-6.神器を祀る神殿の建立(達成済)

1-7.神器のレベルアップその3(達成済)

1-8.神器の3つ願い事(達成済)

1-9.神器由来スキルの会得(3/5達成)


◆◆◆◆◆



 (確認しただけなのに、既に8個も達成してるんだが・・・)


 ワールドクエストを確認してみたら、既に8個終了していたため、奏は拍子抜けしてしまった。


 最初に見た画面が、ワールドクエストの一覧になっていたので、奏は達成済となっていたクエスト1-1の詳細を見たいと念じた。


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-1をクリアしました。報酬として、職業に見合った装備が与えられました》


 神の声が聞こえた途端、奏の体が光に包まれた。


「奏兄様!?」


『パパ!?』


 前触れもなく、奏の体が光に包まれたことで、奏にピッタリとくっついていた楓とルナは驚いた。


 光が収まると、奏の服装は絵に描いたような陰陽師のように変化していた。


「奏君の陰陽師コス・・・だと・・・?」


「え? って、マジか。服装変わってるじゃん」


 紅葉のリアクションをスルーして、奏は自分の着ている服に目をやった。


 そして、確かに自分の服装が全然違うものになっていると理解した。


 そこに、楓が手鏡を持って来た。


「奏兄様、手鏡です。こちらで確認して下さい」


「サンキュー、楓。なんだこれ。紅葉じゃないけど、陰陽師のコスプレみたいだ」


「おいおい、コスプレなんて言うなよ。それ、楓嬢ちゃんのメイド服と同じで、立派な装備なんだぜ?」


 奏までコスプレだと口にすると、心外だと言わんばかりにバアルが口を挟んだ。


「まあ、そうだよな。俺の服も楓の時と同じで、神の声のせいで変わったんだから、ただ着替えさせられたってことはないか」


「おうよ」


『パパ、似合ってるよ!』


「お、おう。ありがとな、ルナ」


 陰陽師の服装が似合っていると言われることは、普通の人生を歩んでいればまずないだろう。


 それゆえ、奏はルナから褒められても苦笑いだった。


「能力値とかの変化は、クエストの達成報酬をチェックし終えてからにした方が良いぜ。どうせ、またいくつか変わるだろうし」


「わかった」


 バアルのアドバイスを受け入れ、奏は他の達成したクエストの詳細を確認し始めた。


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-2をクリアしました。報酬として、バアルの所有するスキルがランダムに上書きされました。バアルの【虚空庫ストレージ】が、【無限収納インベントリ】に上書きされました》


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-3をクリアしました。報酬として、バアルの所有するスキルの内、統合可能なスキルが統合されました。バアルの【支配ドミネーション】と【重力グラビティ】、【地震クエイク】が、【神威ゴッズオーラ】に統合されました》


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-4をクリアしました。報酬として、バアルの復活率が70%になりました》


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-5をクリアしました。報酬として、バアルの復活率が75%になりました》


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-6をクリアしました。報酬として、ルナの【風守護ウインドガード】が、【嵐守護ストームガード】に上書きされました》


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-7をクリアしました。報酬として、バアルの復活率が80%になりました》


《おめでとうございます。個体名:高城奏がクエスト1-8をクリアしました。報酬として、奏の【停止ストップ】と【瞬身テレポート】、【創造クリエイト】、【売店ショップ】が固有スキルに認定されました》


 バアルが言った通り、奏がクエストの詳細を確認すると、達成報酬によって奏とバアルのデータに変化があった。


「【分析アナライズ】」


 怒涛のリザルトラッシュだったので、奏は一旦落ち着いて自分の変化を確認することにした。



-----------------------------------------

名前:高城 奏  種族:ヒューマン

年齢:25 性別:男 Lv:77

-----------------------------------------

HP:770/770

MP:770(+770)/770(+770)

STR:770(+ 770)

VIT:780 (+50)(×1.5)

DEX:770(+50)

AGI:780

INT:770(+50) (×1.5)

LUK:770

-----------------------------------------

称号:<嵐神使徒><一国一城の主><竜滅殺師ドラゴンスレイヤー

   <異界大使><幻獣の守り人>

職業:退魔師エクソシスト

スキル:【分析アナライズ

固有スキル:【停止ストップ】【瞬身テレポート】【創造クリエイト】【売店ショップ

-----------------------------------------

装備1:バアル Lv:77(メイススキン)

装備1スキル:【蒼雷罰パニッシュメント】【無限収納インベントリ】【聖破ホーリーブラスト

      【天墜碧風ダウンバースト】【不可視手インビジブルハンド】【聖炎ホーリーフレア

      【嵐守護ストームガード】【神威ゴッズオーラ】【聖水噴射ホーリージェット】【擬人化ヒューマンアウト

装備2:退魔師エクソシストセット

装備3:結魂指輪(楓)

-----------------------------------------

パーティー:高城 楓

-----------------------------------------

従魔:ルナ(グリフォン)

-----------------------------------------



 時間をかけて、自分に生じた変化を確認し終えると、奏はバアルに訊ねた。


「バアル、1つずつ説明してくれ。まず、固有スキルになった4つは、俺しか会得できなくなったって認識で合ってるか?」


「その通りだ。おそらく、どのスキルも強力で、野心のある奴にそれらを会得するチャンスがあるのを天界の連中が待ったをかけたんだろうぜ」


「俺は良いのか?」


「良いに決まってんだろ。大体、寝放題ライフを目指して無人島まで来るような奴が、野心を剥き出しにするかよ?」


「しないな。面倒だから」


 バアルに自分は例外なのかと確認した奏だが、実際のところはそのスキルを使って世界をどうしたいなんてことは一切考えてない。


 その考えを奏が口にしたことで、バアルは安心したようにニヤッと笑みを浮かべた。


「ほらな。だから、あいつらもお前は特例としたんだ。それに、俺様の復活が順調だから、それの報酬だと思っとけ」


「わかった。んじゃ、次はスキルだ」


「はいよ。【無限収納インベントリ】は、発動時の消費MPが格段に減り、容量は奏のMPが持つ限り無制限なスキルだ」


「ますます便利になったな」


「まあな。んで、俺様的には、こっちのスキルの方が会得できて嬉しいんだ。【神威ゴッズオーラ】は、俺様のオーラを奏に貸与して、奏以下の実力の者の動きを封じることができる。ついでに、こいつはパッシブスキルだから、スキルの威力調整をしろよ?」


「マジか。了解」


「・・・おい、もうちょっとこう、反応しようぜ? 俺様の隠しきれない神々しいオーラが手に入ったんだぜ?」


 奏の淡白な反応を見て、バアルは寂しい気持ちになった。


「威光を振りかざしてるのを見ると、会社のクソ上司を思い出すから抑えてる」


「それな! めっちゃわかる!」


 奏の発言に、紅葉が首を何度も縦に振って同意した。


「やっぱり、働いたら負けなんだ」


 そんな社会人2人を見て、響がボソッと呟いた。


「オホン。社畜話は置いといて、他に何が聞きたいんだ?」


「最後はこの陰陽師みたいな服だ。VIT,DEX,INTが+50になるのか?」


「おう。ここ数日の奏は、魔法系スキルによる攻撃の方が多くなったから、ありがてえだろ?」


「助かる。まあ、今経験した通り、それぞれのワールドクエストはやったほうがメリットがあるな」


「だろ!? 奏、俺様はお前を信じてたぜ!」


「はいはい。みんなも、クリアできるクエストがあったら、クリアしとこう。そうすれば、この島からモンスターを駆逐した後、のんびり過ごせるだろうし」


「わかりました!」


「了解!」


「はーい」


 奏が強化されたのを見た楓達は、奏の提案に賛成した。

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