第3話 モンスター・エッグ
やっとキャラクターメイキングが終わったと思ったら、別の空間に移動させられていた。
崖の上に建つ小さなボロ小屋、小屋の周りには芝生の様な背の低い草が生え広がっている。
「アジトへようこそ!」
1分ほど周りの様子を観察していただろうか、我を忘れてキョロキョロと仕切りに首を動かしていると案内人のゼペルが声を掛けて来た。
「アジト…?」
アジトと言えば映画やドラマで、マフィアなんかが
秘密基地にすら届かない。
「このアジトでは、モンスターの飼育や生産、倉庫など様々な用途で使用します。ユウさん達プレイヤーにとっては自宅でもあるので、頑張って改造しちゃってください!」
「…は?」
自宅…だと?
つまりはボロ小屋に住めという事か?
「さて、お待たせ致しました。ユウさんのモンスターとご対面と行きましょう!」
呆然と立ち尽くす俺を他所に、ゼペルの案内は続く。
「…ハッ!」
気が付いた時には、芝生一面が大小様々な大きさの卵で埋め尽くされていた。
「…えー?」
「この無数にあるモンスター・エッグ中から、一つの卵を選んでください。その卵が貴方にとって最初のパートナーです」
急に選べと言われても、これだけ数が多いと困ってしまう。用意されたモンスター・エッグは大小の大きさ以外に、黄色や水色の単色から複数の色が浮かぶ水玉模様など複数のパターンがある。
こんなに地面を見て歩くのは、母親に連れられて自然公園で育てられた花たちを見に行った時以来な気がする。
「うーん…コレだってのが無い…な?」
何となく歩いていると綺麗な水色の卵に目を奪われる。
特に他に気になった卵もないので、その水色の卵をパートナーに選ぶことにした。
「…はい、確認しました。卵の系統は…おめでとう御座います『幻想』です!」
ゼペルの説明を聞くに系統とは、プレイヤーの種族と同じ物らしい。俺と卵が同じ『幻想』であった為に育成ボーナスが発生するので、幸先が良いと言って良いだろう。
「では、卵の孵化を行いましょう」
ゼペルの言葉が繰り出されるのと同時に、辺り一面を埋め尽くす卵は消え去る。
「卵に触れて『孵化』と唱えてください」
未だ芝生の上に鎮座する卵にそっと手を乗せる。
ほんのりと暖かく、鼓動を感じる……様な気がする。
「…『孵化』」
俺が言葉を発すると卵が光り始めた。
≪モンスター・エッグ(幻想)(水)の『孵化』を開始します≫
システムの声が響き、光が砕け散った。
「おお?」
粉々になった光の欠片が、また一か所に集まると其処からやや大きな卵が現れた。
≪モンスター・エッグの『孵化』に成功しました≫
「卵イン卵?」
「おめでとう御座います。立派なドラゴンエッグです!」
やはり、卵の中から出て来たのは卵でした。
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