第2話 キャラクターメイキング
「良し…セットアップ終了!」
購入したばかりの『リンク—Ⅱ』のセットアップ画面を終了し、カップ入れて於いたレモン風味の飲料水に口を付ける。
「後は、ゲームを楽しむだけだ!」
カップの中身を飲み干すと『リンク—Ⅱ』を装着すると、ゲームの世界へと意識が落ちて行った。
「ようこそ『モンスター・バトル・フロンティア』へ」
「ああ、どうも」
『リンク—Ⅱ』を起動して仮想世界に降り立ったかと思うと、真っ白い部屋の中で見覚えのある美しい女性が、歓迎の言葉を口にしていた。
「わぁ、ゼペルさんだ!」
「あら、わたしの事をご存じなのですか?」
不思議そうに首を傾げ、長い栗色の髪が揺れている姿も美しい。
俺がゼペルさんの事を知っていたのは、事前に調べた『モンスター・バトル・フロンティア』の情報に彼女が紹介されていた物があったのを覚えていたからだ。確か彼女が紹介されていたのは、とあるゲーム情報雑誌だったはずだ。公式サイトでは、チュートリアルキャラクターとして名前だけが記載されている。
その事を伝えると得心がいったという風に、彼女は微笑みを浮かべる。
「では雑誌特典でも付けて於きましょうか?」
「え?」
彼女は所詮サポートキャラクターに過ぎない。そんな彼女に自由に特典を与える様な権限があるのか、それとも元々雑誌特典が存在していたのか、判断に困る事案である。
「そうですねー、何が良いでしょうか……そうです!」
何か思いついた様で、ポンっと手を叩く。
「スキル…スキルを差し上げます!」
「スキル?」
この『モンスター・バトル・フロンティア』の特徴は何と言ってもモンスターの育成だ。だからプレイヤーではなく、スキルと言えば育成するモンスターが連想される。
「しかし、スキルを差し上げる前に、この世界に於ける貴方の依り代を作成しましょう」
「うん」
「では基本となるステータスを表示します」
ゼペアの言葉が途切れると同時に半透明のプレートが現れた。
名前 ユウ
種族
ランク 1
スキル
称号
所持金 0金貨 0銀貨 0銅貨
「おお!」
初めてステータスが表示されるという出来事に、興奮した様に感嘆の声を上げる。
「名前は事前表記にて説明致しました通り、会員登録された際のニックネームが使用されています。最初から記述されているランクですが、全てのプレイヤーはランク1からのスタートになりますので、自動表記されます。詳しい説明はチュートリアルでご説明していますので、チュートリアルを受けることをお勧めします」
「わかりました」
要するに名前は登録時の時に決定されて、他の説明はチュートリアルで纏めて教えるっという事らしい。
「プレイヤーキャラクターの作成では、種族の選択だけで終了です。とっても簡単です」
「種族の種類と特徴は?」
「生まれてくるモンスターに因って変わってきますが、基本的にどの種族を選択してもゲーム中に不利になる事はありません。では一覧を表示します」
先程のステータスとは別に少し大き目のプレートが現れた。
種族一覧
妖精
鳥獣
幻想
無形
昆虫
悪魔
天使
人形
「結構種類があるな…でも」
妖精や悪魔、天使はともかく、昆虫や鳥獣ってなんだよ。人形に至っては生き物ですらないし。
「プレイヤーの種族は、モンスターに於ける『系統』に当てはまります。選択した種族に因って、外見が変わるとなどと云った変化は無いので安心してください。あ…キャラクターの容姿…」
「…」
彼女が思い出したのは、プレイヤーキャラクターの姿だろう。一般的にゲームのキャラクター作成は、容姿設定が先か同時進行が主流である。
「ま、まぁ、容姿は後で…コホン」
咳払いでその場を煙に巻くと、種族の説明を始めた。
「育成モンスターとプレイヤーの種族が同じであった場合、育成モンスターのステータス上昇率が高くなります」
「違った場合は?」
「特に何も…デメリットは発生しませんし」
ボーナスが無い事がデメリットと言えなくもないか…。
ついでなので思いついたまま質問をしてみる。
「それなら属性で良かったんじゃない?」
「………………………今後のアップデートに期待してください」
長い沈黙の後、ゼペアはアップデートを仄めかす。
「じゃあ…種族は幻想で」
「はい、では外見を作ってしまいましょう」
後回しにされた容姿の設定が始まる。
「身長はリアルと同じ173cmで、髪の色は少し濃い目の青色でー目の色は空色!」
キャラクターの基本コンセプトは決まっている。他のRPGを始めとするオンラインゲームでも、青い髪と髪より薄い空色の瞳と氷をイメージして、キャラクターを作成している。
「横幅はどうしますか?」
「リアルと同じで!」
現実の体は、中肉中背と呼ばれるアレだ。
一応、腹筋は割れているのだが、力自慢までは行かない。
顔の方も自慢できるような器量良しとは言い難い。精々三枚目が良い処だろう。
「では、これでキャラクターの作成を終了いたします」
ふぅ、やっとキャラクターの作成が終わった様だ。
次は、いよいよモンスターとご対面である。
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