2-2 気になることは少しでも共有する必要があるよな

「ところで街に入った時から、妙な視線を感じる。気のせいならいいんだけど」

「妙な視線?」

「ああ。勘違いならいいが。今日街を歩いていた時から気になった。知ってる感じの気配っていうか」伊野田は首をかしげる。


「注意するにこしたことはない。どちらの視線だ」琴平が静かに告げた。どちらのというのは人間かオートマタかということだ。

「たぶん人間」目を閉じて思い出す様に、彼は顎をさすった。

「じっとりした視線っていうか。オートマタから向けられる視線って、もっとサラサラしてるんだ。だから人だろうな。それで笠原工業の奴だと思ったんだが、訓練された人間ならともかく、ただの会社員がそんなことできるか?」


「そうだな。笠原工業の人間の仕業か、別の違法機体が入って来てるのかわからんが。それも調べてみるよ」

 拓はそういって、手元で端末を操作した。おそらく彼なりのToDoリストでもあるのだろう。

「頼む。オートマタ相手ならいいんだが、今はなんとなく人間の相手をしたくないな」

「だが、したくない、とは言っていられん。向かってこられれば対応せねばならん。明日からは緊張感を持ちたまえ」


 琴平がそう言ったところで解散になった。先に席を立ち、会議室から出て行った伊野田を、拓は追いかけて「まて、待てよ」と呼び止めた。伊野田は少しだけ面倒そうな顔をして拓に向き直った。


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