006
—— 追跡2 ——
21XX年 某月某日 中域地方オワリ地区東部
主要高速道路を車の合間をかけ抜けるように1台の旧型エンジン式バイクが走行していた。
あぁやっちまった煽りすぎてあの野郎、力を暴走させやがって。
間一髪、その場所を離脱できたからよかったがあれをまともに食らってたら俺もただじゃ済まなかったぜ。
当たらなければどうってこたぁねーか!それよりも早くここを抜けないと—。
遠くの方で赤い光がいくつか見え、そこから徐々に渋滞していた。
あぁっちくしょお、遅かった。やっぱ手が早いなぁ。一旦下道に降りるか。だが下道にも奴らが張ってるに違いない。どうする?戻るか、いや、戻った方がリスキーか。
少しづつスピードが落ちるバイクの前方に1台の大型トラックが割り込んで来た。
チッ、なんだぁクソが前が見えねぇだろうが。エンジン式だからってナメやがって!
ヤるか?いやここで騒ぎを起こすのはヤバいな。とりあえず検問の前でタイヤをパンクさせて事故を起こすか、そうだな?そうしよう?タイヤがあればな、っくっそ新型のよくわからねぇ車は嫌いだぜ、電磁パルスでも投げるか。
いやいやちょっと待てよ、たしかあの形の奴は少し古いタイプの奴だったような。
車体の左側面の下部に動力源があったはず。
ハンドルを握った右手を離し、何もない空間から瞬時にハンドガンを取り出した。
「おぉっとバイクの騒音が酷いとはいえ、銃をぶっ放せば音が聞こえる、アブナイあぶない。周りが静音機能付きの車ばかりだとエンジン式が目立って仕方ねぇ。」
ハンドガンの先端にサイレンサーが生成された。
よし、あとはタイミング。
3、2、
ガチャン!
急にトラックの荷台の扉が開いた。
中には白色が目立つスーツ姿の男が何かジェスチャーを送っている。
あぁなんだぁ俺の最高にクールな作戦を邪魔しやがったな、ってアレは—
白スーツの内側は黒色に染められ、襟元の虎の形を模した琥珀色のチェーンラベルピンに目を奪われた。
「—あぁ、仕方ねぇな」
バイクのアクセルを全開にし、トラックの後方に思いっきりぶつかる。
その瞬間バイクは消滅し、男はぶつかった衝撃でトラックの荷台の中にアクロバットな動きで着地した。
着地の瞬間と同時に男は右手に持った銃をスーツの男の頭に銃口を向けていた。
「俺に指図するとは、死にてらしいな。」
スーツの男は両手を上げなんの動揺もなく振り返った。
「かの有名な、あのラストジョーカー様とお見受けします」
「俺をそう呼ぶ奴は多いが、人違いだ。」
「すでに我々は、あなたの周りを包囲しています。今事を起こせば前方の検問に何かしら異常があると捉えられますが?」
よく見ると周り走っていた車は似たようなスーツ姿の奴らがハンドルを握り、後部座席や助手席にも、恐い顔のおじさま達が座っている。
「いいだろう、わかった落ち着いて話をしよう、俺は今忙しいんだ、これから東に用がある。」
右手の銃が消失すると、両手を上げた男はゆっくりと腕を戻した。
そして荷台の扉が閉まる。トラックのスピードがゆるやかに落ちていき、渋滞に飲まれていった。
「自己紹介が遅れました、私、『琥珀会・須磨組・若頭補佐役・
「あぁ、そう琥珀会ね。白帝のジジイはそろそろ、くたばったか?」
砂染の眉がピクリと動いたが、落ち着いた口調は崩さず続けた。
「白帝....いえ、会長は息災です。それで、本題に入っても?」
「あぁなんだっけ?」
「1週間ほど前に、貴殿の目撃情報が入りまして。オワリの工業地帯に入る前日くらいからずっと足取りを追っていました。貴殿がこの道路で検問に捕まる可能性を考えまして、こんな所で足止めしてしまって申し訳ない。」
「いいぜ、許してやる。俺は寛容なんだ。本当はめっちゃ怒ってる」
「まぁ、ここで出会ったのも何かの縁。一つ依頼したい案件があるのですが、報酬は、安全に東部地方へ行けるっというのはどうでしょう。」
「いゃいや、それと200万だ。俺はこう見えて安く仕事を請け負ってねぇんだ」
「—いいでしょう200万、依頼達成と同時に手渡しで。」
ちぇっ、もう100万上乗せしとけばよかった。
砂染は、少し気が休まったように力を抜いた。
「ふぅ、意外ですね貴殿の様なお方が依頼内容も聞かずに依頼を受けるとは。」
「俺が狡猾で臆病な野郎に見えるか?まぁ確かに気は小さいけどな。それに白帝に恩を売っておきたいしな。」
「なるほど、では依頼内容の説明を。これよりさらに東の地点にて、とある物を受け取り、ハリマ地区にある研究所まで運びます。貴殿にはその間の護衛を担って頂きたい。」
「また西に戻るのか。ここ何年か東に行けないのは俺の気分じゃなくて実は呪いだったりしてな」
「まぁ極秘の案件ですので、平和な運送になるかもしれませんが、今回は念には念をいれておきたいので」
「あぁ金と安全以外興味ねぇからあんまり詮索しねぇよ。だが最近、琥珀会も清龍会もめっきり抗争しなくなって俺は寂しいね。昔は物騒な依頼がいっぱい流れてた。」
「クフフ、」
砂染の恐い顔から笑みが溢れた
「時代が変わろうとしています。我々裏社会も変化にいち早く順応しなければ、北の鸞狂会の様に時代の波に呑まれてしまいます。
琥珀会も清龍会も今はまだ準備をしているのです。」
「次に依頼してくる時はもっと面白い案件で頼むぜ。俺も最近、退屈してっからな。」
トラックはさらに東へ動き出した。
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