14

だから、隠した

夏休み前のいたずら


『明日の放課後、決行ね!』


 ふみかちゃんと由利ちゃんに個別でラインを送ると、2人ともすぐに返事が来た。

 どっちもOKだって。楽しみだなあ。


 梓、どんな顔するだろう?


「マリー。風呂掃除手伝ってー」

「はあい。今行く〜」


 昨日はお兄ちゃんに代わってもらっちゃったし、今日は私がしないとね。


 お姉ちゃんに呼ばれた私は、スマホをベッドの上に放り投げて自室を出た。



***

 


「鈴木さん、次のグループ学習なんだけど」

「なあに、青葉くん」


 青葉くんは、変わった。


 理花の告白と向き合った彼は、良い意味で人の目を気にしなくなった。

 学校でも普通に話しかけてくれるようになったし、何より、こうやってグループ学習にも誘ってくれる。相変わらずセーターを着てるし、髪型もモサッとしてるけど、この変化は大きい。


 それに、クラスメイトと良く会話するようになったのも大きな変化だ。


「男女でペアなんだけど、他の人に誘われてなければ一緒にやらない?」

「誘われてないよ。一緒にやろう」

「良かった、ありがとう。眞田くんは、篠田さんとやるって」

「そうなんだ。じゃあ、近くでやろう」

「うん。川久保さんとかは誰か決まってる?」

「さあ、どうだろ。なんで?」

「さっき、品川くんたちが川久保さんたちとやりたいって言ってたから」

「わかぅた、聞いてみるね」

「よろしく」


 いまだに、青葉くんと話していると視線を感じる。けど、彼が気にしてないから、私も気にしないことにしてるの。

 それより、今気になることは……。


「マリ」

「……なあに?」

「どうしたの、ビクッてしちゃって」

「な、なんでもないよ。それより、どうしたの?」

「あのね、次のグループ学習のことなんだけど」

 

 なんだか、朝からマリたちがよそよそしいんだよね。

 私、何かしちゃったかなあ。


 青葉くんとの話を終えた私は、そのままマリたちの集まっている方へと向かい話しかけた。すると、マリだけじゃなくて、ふみかや詩織、由利ちゃんまで様子がおかしい。

 私と視線を合わせないようにしてるというか、なんというか。でも、ちゃんと会話はしてくれるんだよね。


「品川くんたちが、ふみかたちとやりたいんだって。マリは、眞田くんと一緒でしょ? 近くでやろう」

「わかった」

「いいよ〜」

「じゃあ、青葉くんにOKしてくる」

「はーい」


 うーん。

 どうしたんだろう。


 理由のわからない私は、首を傾げつつ青葉くんの方へと向かう。



***



「ちょっと、マリ! 今のは不自然すぎるよ」

「だってぇ」

「梓ちゃん、変に思ってないかな」

「やっぱ。梓に聞こうよ」

「ダメー!」


 今日の放課後、私たちは梓の秘密を探るべく尾行することになっている。

 詩織は部活で居ないけど、私とマリ、由利ちゃんが行くんだ。……いつも助けてもらってる梓にこんなことするの、結構罪悪感が大きいけど。

 だからか、マリなんて梓の目を見て話そうとしない。すごく不自然。


「聞いても、本当のこと言ってくれないかもしれないじゃん! 私は、真実を知りたいの!」

「大袈裟な……」

「とか言いつつ、ふみかだって楽しみにしてるでしょ?」

「そりゃあねえ……」


 梓は、多分ソラ先輩の好きな人。あの人と居た時間はそんな長くないけど、あれは本気で梓のことが好きになってる感じだと思ってる。

 梓のこと知れば、ソラ先輩の好みわかるかも。そしたら、私も脈アリになるかな。私は、そっちが目的。


「じゃあ、文句なーし! 梓の秘密を、この目で見るのだ!」

「はいはい。そうしましょ」

「後で、梓ちゃんにはちゃんと謝ろうね」

「結果教えてね」

「わかったわかった!」


 放課後、楽しみだな。


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