問題は山積みだけど、仲間がいる

鈴木の新情報が盛りだくさん



 こちら、中庭より中継いたします。

 現在、東雲の誘いを断った俺は、鈴木の隣で絵を描いております。俺は4B鉛筆で、鈴木は着色に移っております。他にもちらほらクラスメイトがいるけど、俺らの周りには居ません。

 そして、その距離は30センチありません。30センチ! ありません!

 フウゥ! 今日は、ついてるぜ!……誰かに睨まれてねえよな。


 青葉が横になったのを確認した俺たちは、早速中庭へとやってきた。

 で、ベンチに座って目の前の桜の木を模写してんだ。


「桜って、こんな葉っぱなんだね。花しか知らなかった」

「おう。実桜って種類だと、さくらんぼも成るんだぜ」

「え!? さくらんぼって桜の木から採れるんだ!」

「その辺の桜にゃ採れねえがな。うちの実家に、さくらんぼの木があるんだ」

「見たい!」

「今度、写真撮ってくるよ」

「うん!」


 はい、本日2度目の笑顔いただきましたー。

 写メりたい。現像して引き伸ばして額縁に飾りたい。……やりすぎか。


「さくらんぼって果物だよね」

「そうだけど?」

「私、最近イチゴが野菜だって知ったんだ。果物と野菜の区別って難しくない?」

「木に成るのが果物って定義があるらしいな」

「そうなの? スイカとかメロンも野菜なのかな」

「多分。果実的野菜って呼ばれるって、母ちゃんが言ってた」

「詳しいんだ。眞田くんの家って、何かやってるの?」

「俺ンち、花屋だから。花だけじゃなくて、果物の苗とかも売ってるんだ」

「え、そうなの!? すごい!」


 そういえば、鈴木って果物好きだよな。

 以前、フルーツと生クリーム盛り盛りのスペパン食ってたし、篠田と桃缶分け合ってた時もあったし。調理実習で、パイナップルうまそうに食ってた時もあったなあ。……ストーカーじゃねぇからな!!

 青葉と同じで、甘いもんが好きなんか?


 男で花屋なんて言うと笑われんだけど、鈴木が興味持ってくれるなら今まで失笑された過去なんて吹っ飛んじまったぜ。

 マジで、笑顔が天使。ギャルは苦手だけど、鈴木はそんな感じしない。むしろ、好きだ。


「たまに、部屋の中にミツバチ飛んでくるぞ」

「え、蜂蜜!」

「す、好きなんか?」

「うん! 飲むの好き!」

「え、の、飲む……?」


 蜂蜜レモンとか、ドリンクにしてって意味だよな!?

 まさか、そのままとかじゃねえよな!?


「パンにつけても美味しいよね」

「お、おう。俺は、オレンジの皮を蜂蜜漬けにしたやつ好きだな」

「美味しそう! でも、それだと蜂蜜の味が薄まらない?」

「……そ、そうだな」


 はい。鈴木は、蜂蜜をそのまま飲むことが確定しました。

 新しい情報、ありがとうございました。これは、横田たちに教えてやんなきゃな。


 てか、可愛すぎんだろ!?

 え、何? 蜂蜜を舐める鈴木? エロい。あ、いやそう言うのじゃなくて!


「どうしたの?」

「へ!?」

「なんかぼーっとしてたから」

「い、いや! なんでもねえ。あの、えっと」

「……さっき、はぐらかしたの怒ってる?」

「…………やっぱ、青葉のこと気ぃ遣ってたのか」

「ごめんね」


 うわ、鈴木ってやっぱ優しい。さっきは、青葉がいたから返事しないでくれたってことだよな。

 こういうところ、好きだ。細かいところに気づくというか、なんというか。


「さっきの返事なんだけど……」


 今、返事くれるってことだよな……。

 俺は、鉛筆の動きを止めて鈴木の言葉を待った。


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