決定事項らしいです……
「だから、五月がしばらく一緒に行動してくれるって」
「……へ?」
え、途中からしか聞いてないんだけど、今凄い話してた気がする。ファンデのメーカー見てて聞き逃したわ。
……青葉くんが一緒に登下校してくれる?
え?なんでそんな話になったの!?もう一度最初から話して!!……なんて言えそうな雰囲気ではないわね。
「……私1人で大丈夫だけど」
「ダメ。ウザいだろうけど、しばらくは我慢して」
なんて言いながら、青葉くんは私の首筋に下地を塗り始める。くすぐったいけど、今はそんなこと言ってられない。
……青葉くんのこと、ウザいなんて思わないけど。けどね!
登下校一緒!?しかも、学校でも1人になる時間あれば一緒にいるって!?それって、なんていうか!なんていうか!
「……い、いいよ。そんなことしたら、付き合ってるって周りに勘違いされちゃう。青葉くんに迷惑かけちゃうし」
「迷惑じゃないよ。鈴木さんにはご飯ご馳走になってるし、恩返しさせて」
「でも……」
「甘えとけよ、梓。1人で居たら、またあいつに何されるかわかったもんじゃねぇ」
「う、う……」
今度は、ブラシがくすぐったい!
フェイスブラシだから、結構しっかりしてるのよね。早く終わって!吹き出しそう!
「……ふはっ!」
あ、ダメ。やっちゃった!
私は、くすぐったくて吹き出してしまった。すぐに手で口を覆ったけど、それを見た青葉くんも笑い出す。
「我慢してたでしょ。震えてたから、わかってた」
「わかってたなら1回止めてよ!」
「あはは、面白くて。もう終わるから待ってて」
「梓はおもしれぇなあ」
「……どうとでも言って」
橋下くんまでバカにして!
こっちは、色々急展開で混乱してるのよ!
「はい、消えたよ」
「……ありがと」
「すげぇ。本当に無くなってる」
そうこうしている間に、さっきまで赤くなっていた箇所が肌色に戻っていた。鏡で確認する限り全く違和感がなくて、橋下くんが言うように本当に無くなったみたい。メイクって、こんなこともできるんだ。知らなかった。
「怖かったね。もう大丈夫だから」
「……」
青葉くんは、そう言ってまた私の頭を撫でてくれた。それが、とても心地良い。
私、顔赤くなってない?すごく熱いんだけど。すぐ頭撫でるのも、癖なのかしら?
「さてと。不安要素なくなったから、オレは仕事行くわ。梓、よかったな」
「しばらくの間よろしくね、鈴木さん」
「……へ?」
待って!待って!
さっきのって、決定事項なの!?!?
ウィッグを被り直した橋下くんは、青葉くんに上着を手渡すと、あのアイドルスマイルをしながら手を振って教室を出て行ってしまった。
……毎日青葉くんと一緒!?嫌じゃないけど、私の心臓もつの!?
というか、マリたちにバレたらなんて説明しよう。
「6限、出れそう?」
「え、ええ。出ないと」
「よかった。一緒に教室帰ろう」
「……うん」
……1番戸惑ってるのは、なんで青葉くんは優しくしてくれるんだろうってこと。私、あなたのこと今まで知らなかったのに。
一緒に食べたご飯が美味しかったから?誰かと食べたのが楽しかったから?それとも、誰かと間違ってない?
私には、青葉くんが魅力的に思えるような箇所はないよ。家事しかできないつまらない人間だよ。
……色々出来る青葉くんとは、全然違うんだよ。
「電気、消すよ」
「……うん、ありがとう」
「鈴木さん」
「え……?」
電気を消した青葉くんは、そのまま私の身体を包み込んできた。
「守るから。……守るからね」
「青葉くん……?」
「……」
返事はない。
言われた意味はわからないけど、その体温は私にとって心地よいもの。
やっぱり、牧原先輩と全然違うわ。……これは、夢なのかな。
夢なら、覚めないでほしいな。
なんて考えていたら、すぐにその温かさは離れていった。
「行こうか」
「……えぇ」
今の、なんだったんだろう?……とりあえず、青葉くんの言う通り6限は出ないとね。
「……」
……ふみか、教室に帰れたかな。放課後話せるといいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます