いろんな理由
学食が混んでいる理由
学食は、普通科の人たちでいっぱいだった。
スポーツ科や芸術科は、別棟があるからあんまこっち来ないのよね。だから、必然的に普通科の人しか使わなくなるの。たまにスポーツ科の子を見かけるけど、芸術科の子は見た事がない。
「ひゃー、なんか今日は混んでるね」
「本当。後少し遅かったら席取れなかったかも」
「何かあった?」
「さあ……。安くなる日じゃないし、人気メニューって訳でもないし」
私と由利ちゃんは、奥のテーブルの一角を確保できた。いつもよく使っていた入り口近くは、他の人が座っていたの。
こういう時、本当は入り口に近い方が良いんだよね。だって、ギリギリまでここにいれるじゃない。学食って結構広いから、奥まで入ると出るの大変なのよ。
「おーい! スペパンゲット〜!」
「マリ、うるさい! 耳元で声出さないでよ!」
「ごめんごめん〜」
由利ちゃんと座っていると、そこにマリとふみか、詩織がやってきた。どうやら、どこかで合流したらしい。みんな、購買の袋を下げている。その中でも、マリの袋がパンパンすぎるんだけど。何買ったらあんなになるの……?
「お疲れー。今日って、何かあるの? なんか人が多い」
「あ、そうそう。さっき購買のおばちゃんと話してきたんだけど、芸術科の橋下くんが登校してるんだって」
「へえ。何ヶ月ぶり?」
「前回来たのが入学式の時だったから、2ヶ月ぶりかなあ」
「芸能人って、忙しいよね」
この学校の芸術科には、「橋下 奏」っていう芸能人が通っている。私はテレビ見ないから、マリが持ってくる雑誌でしか見た事ないけど、バラエティとかドラマにも出てるんだって。同い年なのに、もう働いてるってすごいよね。
でも、その分学校に来る日は少ないみたい。
まあ、そんな人が登校してるって聞けば、一目見たいと思う気持ちはわからなくもない。
「でもさ、なんで学食に人がいるの? 芸術棟行けばいいのに」
「なんか、橋下くんが学食食べたいって言ってたのを誰かが聞いたみたい」
「……それで、コレなのね」
「そんなファンが多い子なんだね……」
よく見ると、そのほとんどが女子だ。入り口付近をチラチラ見ているという事は、まだ来てないんだろうな。こんな多くの人に見られながら、ご飯食べるってどんな気持ち何だろう。絶対落ち着かないよね。
「でも、ここまで来たら見たいな」
「私も〜」
「話題作りになるし!」
「それより、ご飯食べようよ。お腹すいた」
「えー、後ちょっとだけ待ってようよ。5限目まで時間あるし!」
「全く、マリたちもミーハーなんだから!」
どうやら、私と由利ちゃん以外はその橋下くんとやらを見たいらしい。ふみかなんか、スマホのカメラなんか起動させちゃって!
「じゃあ、私はお弁当温めてくる。マリは温かい方が好きだもんね」
「やった! ありがとう!」
「あ、私も行こうかな」
「行ってらっしゃい〜。その間に来たら、写真撮っておくから見せてあげる!」
「はいはい、席だけは取っておいてよね!」
「オッケー! 行ってらっしゃい〜」
私と由利ちゃんは、入り口近くにある電子レンジコーナーへと向かった。
4台しかないから、混んでないと良いんだけど……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます