今まで視界にも入らなかった地味なクラスメイトが、実はかなりのイケメンチャラ男だったなんてことある!?(仮)
細木あすか
プロローグ
過去の記憶
私は、楽しい話がしたい
私の名前は、
校則通りの制服を着こなし、髪の毛は真っ黒で2つ縛り。前髪だって眉上をキープして、「優等生」なんてあだ名が付くくらい模範的な生徒だったわ。
そんな私は、友達に囲まれておしゃべりするのが大好きなの。
だから、先生に1学期のクラス委員長をお願いされた時も、喜んで引き受けたわ。みんなと会話できるのが楽しくて、あっという間に夏休みが来ちゃった。
2学期もお願いされたけど、連続してはちょっとね。私だって、友達と遊びたいし。
「えー! 梓ちゃんって、双子の世話もしてるの!?」
「それでクラス委員の仕事もしてたってすごくない?」
次の授業の準備をしていた時。
友達のありさちゃんと
「う、うん」
私には、双子の妹と弟がいる。
ちょっとわがままだけど、すごく可愛い子達で。
昨日なんか、私が作った夕飯をおかわりしてくれたのよ。
お砂糖とお塩を間違えてね。すごく甘い野菜炒めになったのに、「美味しい!」って言って食べてくれた。
……もう、間違えないけど!
「すごい! だから、部活に入ってないんだね」
「放課後は委員の仕事もしてなかったよね」
「幼稚園の学童の迎えがあるから難しいかな。お昼休みとか使えば、頼まれた分は終わるし……」
「へー、お迎えもしてるんだ!」
「主婦みたい!」
「ま、まあ……。それよりさ」
私のお母さんは、週6でお仕事をしているの。だから、家にはほとんどいない。
パパは、もうここしばらく姿を見ていないな。最後に見たのは、1学期にやった授業参観の時。制服姿で見にきたから、すごく恥ずかしかったのを覚えている。
そんなことよりさ、昨日発売したネイルカラーの話をしようよ。2人とも、発色の良いネイル探してるって言ってたから興味あると思うし。
すごく綺麗な色だったから、今度のお休みにお母さんにおねだりするんだ。
「でも、大変だねえ」
「ねー、可哀想」
「……?」
私が話題を振ろうとすると、ありさちゃんと優奈ちゃんはそう言って笑ってきた。
……ん?
可哀想?誰が?
「だって、自分の時間ないんでしょう?」
「双子の子守りして、家事もやってさー。超お荷物じゃん、双子。親がありえない」
「……え?」
「それで、学校の宿題もやってテスト勉強も? 私無理ー」
「……あはは」
2人は、私に同情して言ってくれている。それはわかるよ、優しい人たちだもの。
でも、違うんだ。そんなことないの。今の生活に、全然不満はないんだ。
だから、私の家族を悪く言わないで。
なんて、私はその言葉が出ず、ただただ笑うだけしかできない。
ここで空気を壊したら、今の楽しい時間が終わってしまうから。
「梓は偉いね。一昨日のテストも満点だったでしょ? なんか、うちらとは別格」
「わかるー。別世界の住人って感じ」
「……」
「あ、そんなことよりさ。次の大会なんだけど」
「なになに? あのタルいやつ?」
「今度、遠征があるんだっけ?」
……あれ、なんでこんな話になったんだっけ?
私は、楽しそうに部活について愚痴るありさちゃんと優奈ちゃんを見ながら笑顔で相槌を打つ。
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