第7話【当日】ぶっつけ本番と余裕

「ハッ!あいつはどこ行ったのです?」

「おはようございます。ちょっと早いですけど、朝ですよ〜。」

えっ?もう?

「はい顔洗ってきてくださ〜い。」

「ちょ、ちょとっと待つのですよ?もう朝なのですか?」

「はい。後3時間ほどで演舞始まりますよ?はい、立ってください。結構時間ギリギリですよ?」

「え?壮行会は?会場の下見は?何もやってなくないですか?」

壮行会はともかく演舞の練習ができていないのが流石にまずいのですよ!それに設計図とか当日の動きとかは覚えましたけど実物見てないからイメージ湧かないのですよ!!

「まあ、寝ちゃってたので、、、」

「起こしてくださいよ!!」

「起きなかったんですよ?起こそうとしているうちに夜中になっちゃいましたし、変な時間に起こしてまた眠れなくなるくらいなら朝までぐっすり寝かせて差し上げようかと。さあ、こっち来てください。着替えとお化粧しますよ。」

「そうですか、、、、。もうどうしようもない時間なのでもう腹を括るしかないのですね。」

口では強めに言っていますが、実際は心臓はバクバクで今にも倒れそうなのです。

でも、頑張らないと。せっかくここまでやってきたんだから。あのいけすかない巫女に負けるにはいかないのです!


ーーーーーーーーー


「フゥ様〜。あれが会場の『大舞台』ですよ〜。」

そこに見えたのは予想の倍はある大きさの円形の舞台でした。観覧席には双方の国の偉い人や国民がいっぱいいます。

あ、やばい。緊張で足が震えてきた。

「フゥ様、そろそろ降りますので準備の程をお願いします。」

「わ、わ、わかったのです。」

「その服、足元引っ掛けやすいらしいので気をつけてください。」

「は、はいぃ!」

緊張で変な声しか出ないのです。

落ち着け。落ち着け。浮けば転ばないし、いつも通りやれば十分に勝てるはず。

そう思えども心拍数は上がっていきます。思うからこそ上がるのかもしれません。

少しずつ息も小さく、速くなっていきます。

過呼吸気味になり、少しボーッとしてきました。意識をしっかりさせるために拳を握ったその瞬間、フィーラに抱きしめられたのです。

「フィー、、ラ?」

「こんな小さい子に大役を押し付けるなんで酷い国ですよね。でも、あなたなら大丈夫。私はあなたの頑張りをずっと見ていたから。あなたなら負けるはずがない。大丈夫。私がついてるから。

少し泣きそうな声でフィーラはそう言いました。そうか、この子はこの子なりに心配してくれたのですね。

「フィーラ、、、ありがとうなのです。」

ここまでされては、、、緊張してる場合じゃないですね。

僕はフィーラの頭を撫でてこう言います。

「ありがとうなのです。フィーラのサポートがなければここには立てなかったのですよ。」

それから、少しの間フィーラの頭を撫でていました。ふと気付いたら乗っていた馬車は会場に着いていました。ここからは私とあいつ、、、双方の国の巫女しか入れません。

「じゃあ行ってくるのです。」

「御武運を。」

さあ、『演舞戦争』開幕なのです!


ーーーーーーー


フゥちゃんを絞め落とした後、流石にオーちゃんに怒られました。

「言い合いになるのはともかく、絞め落とすのは流石にいかがなものかと、、、外交問題になりますよ?」

「いやー、つい。」

「『つい。』ではなくですね。いくら可愛いからと言って今年のワサ様浮かれすぎてませんか?完全に第一印象は最低ですよ?」

「ま、まあ印象だけならこれから上げていけばいいし、、最悪頭の方をちょっといじれば、、、」

「今回の件でフゥ様が怖がったら面会禁止になるかもしれませんよ?向こうのメイドの方が隠密能力高いんですから後ろから『ブスッ!』されても知りませんよ?」

「それは嫌ね。」

「じゃあ反省してください。せめてそういうそぶりをみせてください。頭いじって洗脳するとかもってのほかですよ。」

「はーい。」

確かに絞め落とすのは良くない。反省しました。

「で、今からどうされます?壮行会でもやりますか?あちらの国と違って特に予定にはありませんが。」

「どうせ勝つのは私だから問題ないわ。観光名所巡りとか舞台の下見とかもさすがにいらないしさっさと寝ることにするわ。今フゥちゃんのところに行ったらあっちのメイドさんに殺されそうだし。」

「そうですか。では夕食は後でお届けしますね。」

「ありがとう。」

この後は、言葉通りちゃんとフゥちゃんのところに行かずに部屋でいい子にしてました。行ったら本当にフィーラさんに殺されそうだったし。

そして、演舞の当日も例年通り何事もなく舞台に向かいます。

「さっさと終わらせてフゥちゃんを私のものにしたいわ。」

「欲望だだ漏れですね。ご武運を。」

「あら、心配してくれるの?ありがとう。でも大丈夫よ。フゥちゃんが強そうとはいえ私が負けるわけないじゃない。年紀が違うのよ?」

「まあ、そうですよね。その自信がワサ様の強みですからね。では私はここまでですね。行ってらっしゃいませ。

「今日の晩ご飯は魚系でお願いね。行ってきます。」

さあ、今年も『演舞戦争』が始まります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る