第6話【前日】密会と締め
それからというもの、概ね3-4日に1日くらいの頻度で寝ちゃったフゥちゃんに会っていました。一応毎日炎の国に行ってはいたのですが、その頃はなりたてで色々と行事があるらしくその準備で忙しかったり夜遅くまで起きていないといけなかったりしてなかなか会えなかったのが実情でした。
帰りが夜遅くなりすぎるとオーちゃんに怒られるので早めに帰らないといけないという理由もありました。
しばらくして、フゥちゃんがみこの仕事に慣れていき、イレギュラー多めの仕事が落ち着いてきてからは3日に一回会いに行くということを私とオーちゃん、フゥちゃんのメイドさんの3人で決めました。
ただ、いつも起きているフゥちゃんに会えないことは悲しかったです。こっちも向こうも仕事が多く、なかなか時間が取れないし、何よりフゥちゃんは『意外にポンコツなので間違いなくパニクって何かやらかすから直接会うのはやめよう。』という共通認識があったから我慢はしていましたが、、、やっぱり会えるなら会いたいのです。
なんとか公式に会おうとはしましたが、炎の国がこちらを警戒しているためか中々折り合いがつかず、結局「演舞戦争」まで会えませんでした。
でも、ここまで焦らされたのです。「演舞戦争」で負けたフゥちゃんをどさくさに紛れて可愛がるために、そして一緒に朝まで寝るために頑張りたいと思います!
◇◇◇◇◇◇◇◇
そんなフゥちゃんとの思い出を振り返っていたら、フゥちゃんの演説も終わりに近づいてきた。
「では、これにて失礼する。炎に勝利を!」
おっと、終わったみたいですね。可愛い声でした。さて、次は私の番。フゥちゃんは初めてだったから長くやったけど私は長くやる必要はない。
「では、続きまして水の国の巫女 ワサ=クンスト=フロス様!お言葉を!」
私は呼ばれて前に出る。フゥちゃんは炎の国らしく勇ましさを出していたけれど私は水の国らしくお淑やかに、、、挑発的に。
ーーーーーーーーーー
なんとか噛まずに終われました。緊張MAX!だったので今はほっとしてちょっと腰が抜けそうなのです。おっと、水の国の巫女様が話し始めました。一応ちゃんと聞いておかないといけませんね。
「皆さまご紹介に預かりました水の国の巫女 ワサ=クンスト=フロス でございます。」
お淑やかな感じで堂々と話せてさすが100年以上やっているお方なだけはあるのです。
「私は言葉ではなく実績で語りたいと思いますので手短にお話しします。」
なんかむかつく言い方なのですね。確かに水の国はこの巫女になって以降勝ち続けてますけど、、、。
「これまで通り勝ちます。以上です。」
は?それだけ?流石にカッチーーーンなのです。
流石に挑発されすぎでは?小さいからばかにしてるのですか?いきなりいくのはあまりお淑やかではないですが別にもういいや。どうせこのまま双方挑発しあって終わるんだからもう始めちゃえ。
ーーーーーー
「これまで通り勝ちます。以上です。」
もうなんか面倒になったので台本すら無視して、挑発します。この後の挑発のし合いで生き生きとできるように、可愛いフゥちゃんの顔が見えるようにきつめに挑発します。
そして、席に戻ろうとしたその時、フゥちゃんの怒った声が聞こえました。
「てめー!こっちを舐めるのもいい加減にするのですよ!!」
フゥちゃん?早くないですか?司会の人困ってますよ?でもいいでしょう。周りは存分に困らせて、フゥちゃんを楽しむ!これぞ我が生きる道!
「あ〜ら?今度の炎の国の巫女様はちっちゃく仰せられるのね?可愛いわよ♡。」
言ってる自分もイラっとするほどの猫なで声を出しました。ちょっとはしたないですが挑発には十分でしょう。
「は?人の話が聞こえねーのですか?このババァ!」
ババァって言われました。何も間違ってないですね。怒ってるフゥちゃんも可愛いですね。
「まあ、確かにぃ?100年以上生きてますしババァなのは間違い無いですがぁ?朝一人で起きられないし、見た目からしてもまた“一桁”年くらいしか生きてないお子ちゃまじゃないですかぁ?大人の魅力ってものがわ・か・ら・な・いお子ちゃまじゃあしょうがないですねぇ、。」
もっと挑発しましょう。可愛いし。
「僕は13歳なのですよ!いちいち揚げ足とってくるんじゃねーのですよこのびしょびしょ女!フリーズドライするのですよ!」
フリーズドライを知っているということはやっぱり同じ世界出身ですね。時代もそんなに変わらないかもしれないです。しかも一人称僕なのでもとは自分と同じ男の子なのかもしれないですね。まあ、フゥちゃんは可愛いから問題ないですね。
「できるものならやってみなさい?まあ、あなたができればの話ですけどぉ!オーホッホッホ!」
甲高い声を出してさらにフゥちゃんの精神を逆撫します。フゥちゃんに演舞を本気でやってもらうために。それでもなおこっちが上回ることを証明するために。そして、心の折れたフゥちゃんに優しくするために!
ーーーーーーーーー
「オッツェンさん。あれどうします?取り押さえた方がいいです?」
私はワサ様のお付きの人、、、オッツェンさんに尋ねた。
「挑発タイムがあるとは聞いていましたがちょっと低俗というか、、、売り言葉に買い言葉的な感じなのでしょうか?」
「まあ、大丈夫ですよ。魔法使い始めたら全力で止めるのでその準備だけしておいていただければ。」
「あ、はい。いつもあんな感じなんですか?」
「いつもは二言三言交わす程度です。」
「今回二千言くらい交わしてません?」
「一応歴史的にはあれくらいらしいですよ?初期の頃は2時間くらいやったこともあるとか。」
「もう2時間半経ってます。」
「あらら。記録更新ですね。フフフ。」
なんか笑っちゃってるしこの人。こっちが言える立場ではないが大丈夫か?
「まあ、そろそろ疲れてきたみたいですし、、、あ、ワサ様が締めに入りましたね。」
ああ、流石に向こうは年季が違う。ちゃんと場を収めてくれるらしい。
「あら、ありがた、、、」
収めてくれる感謝を言おうとした瞬間、舞台からこれまでの挑発とはまた違った声が聞こえました。
『ギィブ!ギィブなのですよ!しま、しまってる!』
『そろそろお開きにしましょうね〜?フゥちゃん♡』
『あ、あがっ。』バタン。
「フ、フゥ様ぁ!!」
締めるってそっち?物理的に首を絞める方?え?確かに絶対に場は収められるけど!
「大丈夫。殺しはしないわ。また血で血を洗う戦争になるのは流石に望んではいないし。」
なんか向こうの巫女様が言っていますがとりあえずフゥ様を回収します。
「大丈夫ですか??息は、、、していますね。」
「それでは皆様明日の『演舞』をお楽しみに〜。」
そんな呑気なことを言ってワサ様は帰って行った。こっちの巫女は、、、起きそうにない。持ち帰るか。
「よいしょっと。」
あ、一応挨拶しておこう。
「お集まりの皆様、お付き合いありがとうございました。」
と言いながらペコリと頭を下げた。
「とりあえずこの後ホテルで壮行会やりますので、ぜひご参加ください。では、私はこれで、、、」
壮行会にまでには目を覚ましそうだしとりあえず部屋のベッドで置いておこう。
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