第5話【水の国】変わった巫女とその愛

新しい炎の巫女、フゥちゃんを見た日の夜。私は遠隔移動の魔法を使って炎の国に来ちゃいました。ちなみにこの距離を移動できる魔力量があるのはこの世界では私くらい。

さて、神殿に忍び込んだはいいけどどこにいるのかな?水の国なら1番奥の部屋なんだけどこっちの事情は、、、おっと。人が来たようだ。

「隠蔽魔法(ハイド)。」

人から認識されなくなる魔法を自身にかけます。私の魔力量なら視覚だけでなく聴覚も騙すことができます。

「フゥ様。寝室はあちららしいです。」

目の前を通ったのはこっちのメイドさんと、、、フゥちゃん!

可愛いなぁ、、、。寝てるけど。

私もフゥちゃんをお姫様抱っこしたい!羨ましい!!

「しっかしすぐ寝ますねこの人。巫女選定の時から良く目つむってるとは思ってましたけどまさか寝てるとは思わなかった。」

なるほどフゥちゃんはよく眠る人、、と。

そうだ!この人についていけば部屋がわかるじゃない!

とりあえずついて行こう。


ーーーーーーーーーーー


それから少し歩いた先、そこがフゥちゃんの寝室らしい。

『うちの国と違ってちょっと手前側にあるのね。カモフラージュ?』

『あら、ベッドフカフカ。うちの国は結構固いやつしかないせいでなんとなく休まった気にならないのよね〜。』

『あら、棚の上にちょっと埃が残ってるわよ。掃除したのかしら?』

などと思っていると。

「よいしょっと。」ドタン。

メイドさんがフゥちゃんをちょっと雑にベッドに置いていたところでした。

『ちょっと雑ねぇ。もっと優しく扱えないのかしら。』

「そこ、煩いですよ。」

え、何?バレてるの?カマかけてるだけよね?

「そのレベルの隠蔽魔法が使えるというと、、、水の国のワサ様くらいしかいませんね。隣の国から良くいらっしゃいました。」

え?そこまでわかるのです?まさか。

「流石にお話ししたいことがあるので出てきていただけますか?」

出てこいって言って出て行く奴はいないでしょ。ここで出たら国際問題になりそうですし。うまいこと隠れて、、、まさかバレてるわけないですし。

「出て来いって言ってますよね。」

ガシィ!!

えっ?腕掴まれたって痛い痛い痛い!この子腕力やばいって!わかったわかった!

「わかったから!結構痛いって!」

「やっと出てきましたか。誰かストーキングしてるとま思ってましたがこんな大物がいるとは思いませんでしたよ?」

「私をどうする気なの?人質?処刑?100年くらいこの国は私の国に負けてるからいい腹いせになるんじゃない?」

まあ、そう簡単に殺されるつもりはないけどね。

「別にそんなことしませんよ。大方、フゥ様が可愛いから見にきたんじゃないです「そう!可愛いよねこの子!」

ついつい食い気味で行ってしまった。実際可愛いもんこの子。

「やはり。この可愛さには水の国の巫女も落ちると。」

「この長い髪の毛とか最高よね〜。」

そう言って寝てるフゥちゃんの髪を触ろうとすると、メイドに止められた。

「一応敵国のトップなのでそうやすやすとは触れさせないです。」

「あら、この子を撫でる権利はあなたにしかないとでも?」

敵国のトップに対して気丈な態度を取れるのはよっぽど肝が座っているのでしょう。こういうタイプは大好きです。

「基本的にはそうですが。でも、せっかく来ていただきましたし交渉しましょう。」

言い切っちゃったよこの子。まあ、気軽にフゥちゃんに接触できるのこの子ぐらいだろうけどさ。

「基本的にもそうでない気がするけど、、、?まあ、いいでしょう。で?何が欲しい?金?領土?屋敷?」

「そんなあからさまな物はいいです。バレると厄介なので。私側の条件はたった一つ、、、殺さないでください。」

後半、彼女の声は震えていました。気丈に振る舞っていたとはいえこっちは100年以上生きている敵国のトップ。彼女が恐怖を覚えるのもおかしくはないでしょう。

「その程度なら全然いいわよ。もともとそんな気もなかったし。」

「そうですか。よかった、、、。フゥ様が起きない程度でお願いしますね。」

彼女は明らかに安心した様子でそう言いました。

「ありがとね。じゃあお言葉に甘えて、、、フゥちゃんかわいい♡。」

あ〜〜。すごいサラサラな髪の毛してる〜!ほっぺもぷにぷにで弾力がすごい!これ癖になりそう。

「お楽しみのところ申し訳ないですがそろそろお帰りください。」

フゥちゃんのメイドさんは独占欲強い子なのかしら?無視してみたらどうなるか試してみましょう。あ〜〜。お肌すべすべ〜。スキンケアとかいらなくて羨ましい。

「あ、あの〜ワサ様?お連れ様がお迎えに、、、いらしてるのですが?」

「お連れ様なんていないわよ?単独で来、、、た、、、。」

そう言いながら振り向くとそこにはうちのメイド、、、オーちゃんが立っていました。

「ワサ様?そろそろ帰らないと明日起きられませんよ?」

「え、なんでオーちゃんはいつの間に入ってきたの?というかどうやってここまできたの?」

「いや、昼の時の反応から絶対こっちに来ると思ってたのでワサ様の転移に相乗りさせていただきました。

「あ、そ、そう。」

あれ、相乗り?この子私より隠密行動向いてない?

「もうちょっと撫でさせて?」

「いいですけど明日の朝メイクの時間無くなりますよ?流石にスッピンで出るのはちょっと、、、。」

「え!もうそんな時間?」

「神殿の中をメイド、、、フィーラさんは結構長い間歩いてましたからね。誰かさんが付けてきているって分かってたから。」

「あはは、、、。ごめんなさい。あなたの睡眠時間も削ってしまって。」

と、私は炎の国のメイドさんに謝る。

「いえ、構いませんよ。」

「本音は?」

「こっちも眠いのに睡眠時間削りやがって」

「オーちゃんは変な茶々入れないの!フィーラさん、、、でしたっけ?本当にごめんなさい。」

流石に人の睡眠時間を削って迷惑をかけるのは本意ではないですし、そもそも潜入した時点で悪いのは私ですからね。ちゃんと謝っておきましょう。

「別にいいですよ。またいらして下さい。」

「あ、ありがとう。しばらくは来ないつ、え?」

「また来てもいいですよ?深夜であれば直前に連絡さえくれればいつでも大丈夫です。」

「え?本当?やった!?」

え、実質フリーパス?なんか知らないけどやった!これからもいっぱいナデナデできる!

「フィーラさん。マジっすか?」

「いやまあ、悪い人ではないですしそれに、、、フゥ様の可愛らしさを多くの方に広めるのは悪くないかなって。」

「そうですか。ところで連絡ってどうするおつもりで?」

「私の寝室の窓の鍵を開けてくだされば大丈夫です。無理そうな日は開かないようにしておきますので。で、お願いがあるのですが。」

「なんでしょう?」

「そこで舞い上がってる人を落ち着かせて下さい。この話をしたいので。」

「全部聞こえてるから大丈夫よ!また会える♡ナッデナッデできるっ♡。」

「ウチの主人がすいません。帰りますよワサ様?」

「分かったわ!じゃあフィーラさん!また会いましょう!」

「お疲れ様でした。連れて帰りますので今後ともよろしくお願いします。」

「こちらこそ。」

「二人とも疲れてない?ほらスマイルスマイル!いいことあったんだから!」

「「お前のせいじゃ(です)!!」

との2人の大声とともに転移が発動し、私のフゥちゃんとのファーストコンタクトは終わりました。

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