転校生の正体は?
「あいつは絶対に変だ! 様子がおかしい! 行動が怪しい! すべてが不自然すぎる!」
昼休み。食堂ではなく部室に集まった六人は、さっそく今朝の話の続きを始めたのであるが、誰よりも早く開口一番、コウが優希について言い出した。
「いきなりどうしたの? あいつが変って、どういう意味よ?」
アリスはすごい剣幕を見せるコウに問い質した。
「だから、屋上であいつに会ったんだよ──」
そう言ってコウが屋上で優希に出くわした話を皆に話して聞かせた。
「ちょっと、コウ。授業中にどこに抜け出したのかと不思議に思っていたら、そんなところにいたの?」
コウの話が終わるやいなや、櫻子が電光石火の速さでツッコミを入れた。
「そんなのオレの勝手だろうが。オレみたいな行動派の人間には、ゆっくりと身体を休める時間が必要なんだよ」
「あら、授業を抜け出したのは肉体的な理由じゃなくて、精神的な理由の方が大きいんじゃないの?」
「はあ? どういうことだよ?」
「難しい授業を受けていると、頭がパニくるってことよ。特にあんたみたいなマッスル脳の人間はね」
コウに対する櫻子の言葉は相変わらず容赦がない。
「はいはい、くだらない話はそこまでにして、さっさと本題に移るわよ」
コウと櫻子のやり取りに慣れきっているアリスは昨日みたいに茶々を入れることなく、事務的に話を打ち切って、元の優希の話を再開した。
「とにかく、コウの話を聞く限りじゃ、優希くんが授業中に教室を抜け出して屋上にいたのは、たしかにおかしいわね」
「なあ、アリスもそう思うだろう?」
話を済ませてやっと気持ちが落ち着いたのか、コウは同意を得たという風に大きく頷いた。
「彼はいったい屋上で何をしていたのかしら? そこが問題じゃないの?」
のどかが冷静に疑問点を指摘した。
「それから俊実くんの容態も気になるわね。もしも、本当に優希くんが俊実くんに何かしたというのならば、その点もしっかりと調べてみないとね」
「あいつが俊実に何をしたのかは分からないけど、俊実のあの倒れ方は絶対におかしかったぜ!」
「――そんなことがあったのね」
部室のドアの外から可愛らしい声が聞こえてきた。
「ちょっと姉さん──!」
声の主に最初に気付いたのどかが慌てて部室のドアを開けて、姉のほのかを室内に招き入れる。
「姉さん、外で何をしてたの?」
「何って、のどかが橋塚くんの容態を聞きたいっていうから、わざわざ保健室からここまで遠出して教えに来たのよ」
ほのかは当然でしょという口調で答えた。
「たしかに姉さんにはそう頼んだけれど、だったらいつまでも外にいないで、すぐに部室に入ってくればいいのに」
「だって、中に入るんだったら、さっそうと格好良く入りたいでしょ? だから、外で部室内の話を聞きながら、ここぞというタイミングを見計らっていたのよ」
「もう、タイミングなんていつでもいいでしょう!」
のどかはマイペースのほのかに完全にお手上げ状態である。
「それでほのか先生、俊実くんの容態はどうなんですか?」
アリスは代表して肝心の質問をした。
「そうだったわね。橋塚くんの容態ね――」
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