第2話 高校生はいつだって誰かが与えたキャラ設定にしたがって日常を過ごす

 二年生初日、始業式の日貼りだされた全国の高校御用達のやっすい模造紙にかかれたクラス替えの表を一目で確認し、教室へと向かっていた。なぜ一目かといえば簡単で、苗字である渡良瀬は五十音順で一番下に描かれているからだ。結構便利。出席番号も変わらないし、最初の席は確実に一番後ろになれる。だいたい自己紹介の時とかに、ア行の苗字のだれかとじゃんけんさせられ、トリかオオトリになる。最初になった場合は、失敗しても許されその後続く自己紹介で誰かの記憶にとどまることはないし、最後なら最後でみんな自己紹介にあきて、遠い目をしているから記憶にとどまることはない。クラスで個人発表するときもまったく同じ。今日は四月五日だから出席番号五番の人ー的にあてる先生の回避率も99パーセント。まずあたらんね僕には。そんなくだらないことを考えているあいだに二年二組の教室についていた。クラスでは早速、知り合い同士が今年も一緒だねーやらはじめて一緒になれたねーやら部活メンバーで固まったりやらしている。さらには、近くの席のひとと話をはじめそれなりに盛り上がりを見せている。ちなみに、新入生のときにそれができないと早速つまずきます。ざっと見たところ話せるやつが何人かいるので、俺が孤立することはなさそうなので、窓際一番後ろの特等席に鎮座し、学校生活二年目のはじまりのチャイムを待った。

 最初はグー、じゃんけんぽん。始業式が終わり、さっそく恒例の自己紹介が始まった。予想通り、出席番号一番の人と俺がじゃんけんすることになった。結果僕が負けて一番から順番通り自己紹介することになった。自己紹介は重要視されることが多いが実際問題そんな気負ってやるものではない。たとえば、ありふれた感じでやるかちょっと派手にやって目立とうとするか、個性を出そうとするか悩み実行するが、結局自己紹介のやり方変えたところで個性は変わらんし滲みでるものだ。などとどうでもよいことを考えてるうちに自分の番が近づいてきた。どうやらこのクラスは、サッカー部数名を筆頭に男子の多くは運動部で構成されており、女子のほうは運動部と文化部半々と運動部に所属する女性が全体的にすくないうちの傾向から見るとかなりアクティブなクラスになりそうだった。さてと次は、俺の前の子かな?と思うのと同時に、教室の雰囲気が少し変わったのを感じる。自己紹介をはじめたのは、おそらくこのクラスでもっとも紹介する必要のない学年の有名人物水無月朱鷺羽だった。「水無月朱鷺羽です。三年生のクラス替えがなく、二年間このクラスで卒業までの高校生活を過ごしますので、どうぞよろしくお願いします。」上品さをもったほほえみをしながら放たれた言葉はありふれたフレーズにも関わらず、とても洗練され清潔感のある美しい響きにきっとだれもが感じられた。水無月朱鷺羽は、文武両道、眉目秀麗まさにその言葉が言い表す存在だ。コミュニケーション力にもたけており、まさに高校という社会の優等生だ。そういった彼女はもちろん男女問わず人気があるのだが、不思議なのは浮いた話をまったく聞かないことだ。まぁおそらくそういったオーラを彼女がうっすらと嫌味にならない程度に放っているからなのだろう。そんな彼女と俺は一度も話したことがない。単にかかわる理由がなかったのと同時に、どうも俺は彼女にほかの女子とは異なる雰囲気を感じていた。というのも、彼女は友達と話しているときどうも一つ心の距離を開けているように感じたからだった。

「それじゃあ最後に渡良瀬自己紹介よろしくー。」先生の呼びかけで次が自分の番であったことに気づき、なんとも淡泊な自己紹介を済ませた。

 「おい泊トイレ行くぞ」休憩時間に入り話しかけてきたのは、ラグビー部部員瑞浪洞爺。体は俺より一回り大きくまさに体育会系で、性格も体育会系だ。基本物理的力によって俺をトイレや雑用、隙間時間いろいろなところに連れまわす。けれども、意外と周りも見ており思いやりがあってなんだかんだ言って中学のころからずっと付き合っている。ちなみにわが高校三原高校は中高一貫学校で、高校5クラス中3クラスは中学からのメンバーで高校から新たに2クラス分新しいメンバーが追加される。中学から三原にいる生徒は内進生、高校から入ってきた生徒を高入生と呼ばれる。俺、洞爺は内進生で中学一年生のころからつるんでいる。教室近くのトイレに入れば同じクラスのやつらがいくつかのグループになって話していた。「水無月と同じクラスでまじうれしーわ。」「それなやっぱ近くで見るとかわいいわ。」「おっぱいもほどよくあってちょうどいいわ。」「さらには渚沢もいるしなー、フレンドリーであのたわわなおっぱい当たることあるし。」とまぁ、クラスの女子に対する講評会が中心なのだが。ちなみにトイレや更衣室でこういう下世話な話をしている場合、ほとんどが外に漏れ出ている。先生も女子も聞かないふりをするのには慣れているものなのだ。「とまりー。教室トイレと近くてよかったな。」さっさと小便をすませて手洗いに向かいながら、俺に向かってのほほんといった洞爺の言葉を聞いてこういうやつだからこそ、友達でよかったと再認識した。

 用をすませた俺らが教室に戻ると委員会・係決めがはじまろうとしていた。「みなさーん。休まずこれからの委員会・係決めをするうえで最初に学級委員を決めていこうと思うんですけど、だれか立候補する人はいますかー、いなければ私と琢磨くんでやろうと思うですがどうでしょうか?」そう切り出したのは初日、始業式の日貼りだされた全国の高校御用達のやっすい模造紙にかかれたクラス替えの表を一目で確認し、教室へと向かっていた。なぜ一目かといえば簡単で、苗字である渡良瀬は五十音順で一番下に描かれているからだ。結構便利。出席番号も変わらないし、最初の席は確実に一番後ろになれる。だいたい自己紹介の時とかに、ア行の苗字のだれかとじゃんけんさせられ、トリかオオトリになる。最初になった場合は、失敗しても許されその後続く自己紹介で誰かの記憶にとどまることはないし、最後なら最後でみんな自己紹介にあきて、遠い目をしているから記憶にとどまることはない。クラスで個人発表するときもまったく同じ。今日は四月五日だから出席番号五番の人ー的にあてる先生の回避率も99パーセント。まずあたらんね僕には。そんなくだらないことを考えているあいだに二年二組の教室についていた。クラスでは早速、知り合い同士が今年も一緒だねーやらはじめて一緒になれたねーやら部活メンバーで固まったりやらしている。さらには、近くの席のひとと話をはじめそれなりに盛り上がりを見せている。ちなみに、新入生のときにそれができないと早速つまずきます。ざっと見たところ話せるやつが何人かいるので、俺が孤立することはなさそうなので、窓際一番後ろの特等席に鎮座し、学校生活二年目のはじまりのチャイムを待った。

 最初はグー、じゃんけんぽん。始業式が終わり、さっそく恒例の自己紹介が始まった。予想通り、出席番号一番の人と俺がじゃんけんすることになった。結果僕が負けて一番から順番通り自己紹介することになった。自己紹介は重要視されることが多いが実際問題そんな気負ってやるものではない。たとえば、ありふれた感じでやるかちょっと派手にやって目立とうとするか、個性を出そうとするか悩み実行するが、結局自己紹介のやり方変えたところで個性は変わらんし滲みでるものだ。などとどうでもよいことを考えてるうちに自分の番が近づいてきた。どうやらこのクラスは、サッカー部数名を筆頭に男子の多くは運動部で構成されており、女子のほうは運動部と文化部半々と運動部に所属する女性が全体的にすくないうちの傾向から見るとかなりアクティブなクラスになりそうだった。さてと次は、俺の前の子かな?と思うのと同時に、教室の雰囲気が少し変わったのを感じる。自己紹介をはじめたのは、おそらくこのクラスでもっとも紹介する必要のない学年の有名人物水無月朱鷺羽だった。「水無月朱鷺羽です。三年生のクラス替えがなく、二年間このクラスで卒業までの高校生活を過ごしますので、どうぞよろしくお願いします。」上品さをもったほほえみをしながら放たれた言葉はありふれたフレーズにも関わらず、とても洗練され清潔感のある美しい響きにきっとだれもが感じられた。水無月朱鷺羽は、文武両道、眉目秀麗まさにその言葉が言い表す存在だ。コミュニケーション力にもたけており、まさに高校という社会の優等生だ。そういった彼女はもちろん男女問わず人気があるのだが、不思議なのは浮いた話をまったく聞かないことだ。まぁおそらくそういったオーラを彼女がうっすらと嫌味にならない程度に放っているからなのだろう。そんな彼女と俺は一度も話したことがない。単にかかわる理由がなかったのと同時に、どうも俺は彼女にほかの女子とは異なる雰囲気を感じていた。というのも、彼女は友達と話しているときどうも一つ心の距離を開けているように感じたからだった。

「それじゃあ最後に渡良瀬自己紹介よろしくー。」先生の呼びかけで次が自分の番であったことに気づき、なんとも淡泊な自己紹介を済ませた。

 「おい泊トイレ行くぞ」休憩時間に入り話しかけてきたのは、ラグビー部部員瑞浪洞爺。体は俺より一回り大きくまさに体育会系で、性格も体育会系だ。基本物理的力によって俺をトイレや雑用、隙間時間いろいろなところに連れまわす。けれども、意外と周りも見ており思いやりがあってなんだかんだ言って中学のころからずっと付き合っている。ちなみにわが高校三原高校は中高一貫学校で、高校5クラス中3クラスは中学からのメンバーで高校から新たに2クラス分新しいメンバーが追加される。中学から三原にいる生徒は内進生、高校から入ってきた生徒を高入生と呼ばれる。俺、洞爺は内進生で中学一年生のころからつるんでいる。教室近くのトイレに入れば同じクラスのやつらがいくつかのグループになって話していた。「水無月と同じクラスでまじうれしーわ。」「それなやっぱ近くで見るとかわいいわ。」「おっぱいもほどよくあってちょうどいいわ。」「さらには渚沢もいるしなー、フレンドリーであのたわわなおっぱい当たることあるし。」とまぁ、クラスの女子に対する講評会が中心なのだが。ちなみにトイレや更衣室でこういう下世話な話をしている場合、ほとんどが外に漏れ出ている。先生も女子も聞かないふりをするのには慣れているものなのだ。「とまりー。教室トイレと近くてよかったな。」さっさと小便をすませて手洗いに向かいながら、俺に向かってのほほんといった洞爺の言葉を聞いてこういうやつだからこそ、友達でよかったと再認識した。

 用をすませた俺らが教室に戻ると委員会・係決めがはじまろうとしていた。「みなさーん。休まずこれからの委員会・係決めをするうえで最初に学級委員を決めていこうと思うんですけど、だれか立候補する人はいますかー、いなければ私と琢磨くんでやろうと思うですがどうでしょうか?」そう切り出したのは清水日菜乃いわゆる仕切り屋さんだ。基本的にクラスに一人は必ず生息し、学校あるあるの鉄板キャラ。男子ちゃんとやってーが決め台詞だ。しかしながら、実際そういった従来の仕切り屋は絶滅しつつある。最近では、ほんとはやりたくないけど仕方なくやってるという保険をかけることが多い。真面目委員長キャラはもう死に絶え、女子高生の輝きのなかではそれさえもキャラの要素として吸収され、やりたくないけどみんなのためにまとめる私えらいキャラを確立するのだ。恐ろしいのは、立候補を募っているように見せかけて実は前提としてだれも立候補しない前提で本人たちが聞いている点。やらなければ自分たちがやることを示しているあたりが計算高い。ここで有象無象が立候補した瞬間、白い目で見られることは確実。「それじゃあ誰もいなさそうなので、改めまして清水日菜乃です。体育祭、文化祭も楽しくゆるくやっていきましょー。よろしくお願いします。」そういって、ぺこりと軽くお辞儀。言葉から行動まですべてが軽い。だが、それが余裕ある態度として成り立っている。さすがだ...「同じく学級委員を務めます。島田琢磨です。よろしくお願いします。」ちなみにこちら島田琢磨は、サッカー部。サッカー部の中では、もっとも真面目といえる存在で部長を務めていた気がする。「では、さっそく委員会と係を決めていきたいと思いまーす。各委員会・係の定員はある程度決まっているので、希望するところに自分の名前を書いてもらって、定員があふれたところが話し合いで決めてもらい、余っているところにはいってもらう形にしたいと思います。」

 「誰か移動してくれる人いますかー?」清水が呼び掛けても誰もうつむいて反応しない。先ほどまで委員会・係決めは円滑にすすんでいたのだが、最後になって問題が生じた。第一希望、第二希望も通らなかった阿部くんが余った委員会に入りたくないのだ。実際こういう話はよくある話で、小学校の学芸会でシンデレラ役をだれがやるかで揉めるのと本質的問題は変わらない。こういう決め事はいつだって希望を聞き、希望が集中した場合は話し合いやじゃんけんによってみなが納得するかたちで、決められる。しかしながら、そういった一度は納得したシステムで分別が進むにつれどうしてもあぶれるものがでてくる。その時、これは不公平だとその者が言った瞬間これまで完璧と思われていた選抜システムは瓦解する。それが、話し合いで解決すればいいものの結果的にはシンデレラ役10人になるといった嘘のような本当の話に通じることだってある。阿部は、いい意味でこういう空気に流されない。多くの人は、しょうがないと思ってあまりものを選ぶ場面だが、阿部はそんな判断はしないそれがクラスの共通認識だった。実際理屈で考えれば、阿部がやるのが正当なのだが、学校というシステムは強制的にやらせることをしないことを正しいものとしているので、どうしても阿部の理論に抵抗できないのだ。では、どうすればいいのか。その答えを誰も導くとはできず誰もがうつむいた教室のまま、時間だけが過ぎていった。

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