第11話 みんなで図書館
というわけでみんなを連れて図書館に到着した。瑠希は振り返ってドランとドレミにその建物を紹介する。
「ここが我が市の図書館です」
「ほう、ここに本があるのか」
「楽しみですわね。どんな本があるのでしょう」
「あまり期待されるのもあれだけど……とにかく入るね」
「お邪魔しまーす」
瑠希とドランとドレミに続いて萌までついてくる。四人で階段を昇り廊下を歩くとそこが図書室の入口だ。
一人で来た事はあるけれど四人で来るなんて初めてで瑠希はちょっと緊張してしまう。
「図書室では静かにね」
「了解だ」
「分かりました」
「はーい」
基本的な事をみんなに注意してから入る事にする。
萌にまで言っているつもりはないのだが、ドラン達が素直に返事をして瑠希はほっとした。これなら騒いだりする心配はなさそうだ。
扉を開けるとそこには静かな空間が広がっている。
一面の棚にびっしりと本が並べられており、奥にはパソコンコーナーもある。そしてその手前にあるカウンターが受付だ。
瑠希はドラン達が本に興味を示すのかまだ少し疑っていたが、意外にもドランは目を輝かせていた。
「すごい数じゃないか。こんな数の本を見られるなんて感激だ!」
「そうかな。これぐらい普通だと思ってた」
「るっきーは知らないかもしれないけど、ここは県内でも有数の蔵書量を誇るんだよ」
「あ、そうなんだ」
萌の説明に瑠希の方が驚いてしまう。萌はフフンと笑って瑠希の顔を覗きこんできた。
「るっきー、今『わたしの知らない事なんてなかったはずだったのに』って顔してるよ」
「してないよ!」
つい叫んでしまってから慌てて自分の口を押さえる。図書室では静かにしないといけないのだ。
ドレミはというとどこに行けばいいのか分からないといった感じできょろきょろと見回している。
そして、瑠希と目が合うと彼女は困った質問を投げてきた。
「瑠希さん、おすすめの本を教えてくださいませんこと?」
「え? おすすめ? うーん、わたしのおすすめはこれかなぁ」
瑠希が手に取ったのは外国の小説だ。人気作だけあって図書室でもおすすめの手に取りやすい場所にあって助かった。
最近はネット小説を読む事が増えたが、その前にはこういうのを読んでいた。ファンタジー系で面白い作品だ。
ドレミはそれを受け取ってパラリとページをめくり始める。
「面白そうですわね。これを読んでみますわ」
「うん」
さて、ドランはと見てみると漫画を読んでいた。隣で萌が話しかけている。あっちは任せておいて大丈夫そうだ。
「じゃあ、わたしはネット小説でも読もうかな」
最近はそうした本も置いてある事は知っていたので、瑠希はまっすぐにそっちのコーナーに向かった。そこでアニメ化もされてる有名な本があったので手に取って席を探す。窓際の一角に空いている場所があったのでそこに座る事にした。
瑠希が椅子を引いて腰かけると隣の席に誰かがやってきた。
見るとそれは萌だった。彼女はこちらを覗きこむようにして言う。
「何読んでるの? 転生したらスラスラリンになった件?」
「ううん、ホタテの勇者の成り上がり」
「ああ、そっちか」
転スラも気になってはいるんだけどこの図書館には置いてないんだよね。
「そういう萌ちゃんは何読んでるの?」
「あたしはね、これはこれで定番だけど、竜神ものだよ。やっぱ地元民としては調べたくなるよね」
「あ、そっか。萌ちゃんはドランに興味があるんだもんね」
「言い方ー。るっきーだって興味あるでしょ?」
「まあ、少しは」
「じゃあさ、少しは知っとかないとね」
そう言って萌はページを開いて瑠希の前に置いた。そこに書かれているのは竜神の物語だ。
昔々、この世界は邪悪に支配されていました。それを見かねた天界の神様は地上に一人の竜の子を送りました。
彼は剣を持って戦い続け、ついに邪悪な王を倒す事に成功しました。しかしその時、彼の身体は傷つき力を失ってしまったのです。
そんな彼を人々は哀れみ、その魂だけは救おうとしました。
こうして彼は人間として生まれ変わり、今もなお人々のために戦っているといいます――。
「ふーん、竜神にはこんな物語もあるんだ。知らなかった」
「まあ、これはフィクションなんだけどね」
「フィクションかい」
「まあ、竜神にもいろいろあるみたいだね。ところでドラン君の事は放っておいて大丈夫?」
「そうだね。ちょっと様子を見てこようかな」
萌に任せる気でいたのにそう都合よくはいかなそうだ。彼女も押し付けられる気配を察知してここへ来たのだろう。気配りのできる友人だ。
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