第374話 墓場からの励まし

墓場には 命がない

死んだ者が 葬られ 

屍しか存在しない所


しかし果たして

本当にそうだろうか?


人生を全うし 天寿を全うした者

不慮の事故で 予期せず命を堕とした者


心が病んで 自ら身を亡ぼす者


しかし死んだ先に 

果たして・・何があるのだろうか?


人生は一度しかないないもの!

神から与えられた命を 

いかに大切に扱うか を

我々は 考えるべきである!


もし人生に 迷いが生じ

孤独と戦う事があったと するならば・・

大丈夫 あなたは 決して一人ではない!


『共におられるお方が

確かに存在します!』



ひとりの男性が

墓場に 座り込んでいた・・


「誰だ!誰が・・・

私の大切な家内の墓を荒らしたのだ!!」

泣き崩れた男性は 大粒の涙を流し・・

ひどく落胆し 途方にくれていた・・


その時だ!

背後から声がした


「おじさん! 

どうしたの?

何があったの?」


葵であった!


「お嬢ちゃん?

君は知らないかい?

昨日まで 墓場は無事で

荒らされた形跡はなかったのに・・誰かが

墓場を無茶苦茶にした!


家内の遺体の入った 

棺桶が盗まれてしまったのだ!!」


「誰が!?

何故 そんな酷い事を・・・」


「家内が死んで 早1年

家内との思い出が あまりにも深すぎて

わたしは・・・忘れる事ができないのさ・・・

私は悲しみに暮れ 

共に死にたいとまで思ったが。。


息子が 必死で励ましてくれて

忘れようと努力をし 

ようやく立ち直る事ができたのに・・・」


「おじさん! 

どうして大切な思い出を

忘れないといけないの?


おじさんにとって 

大切な思い出ならば

一生の大切な宝として 

心の奥に 閉まっておけば良いと思うわ!

それに亡くなった奥さんも 天国から

おじさんが 思い出を大切にしていたら

きっと嬉しく 思うのではないかしら?」


「・・・・・・・・・・・

君は・・誰だ? 

どうして そのような 

優しい言葉をかけてくれるんだい?


君も もしかしたら 

大切な人を失った事があるのかい?」


「私の母は・・・・

生きているのか? 

死んでいるのか? 分からないの・・・


でも生まれてすぐに 私を置いて

どこかへ行ってしまったの・・・


今育ててくれている人も 

本当の父さんではないらしい・・」


「どうして そのような事が?

お嬢ちゃん 辛くないかい?」


「辛くないと言ったら 

嘘になるけれど

大好きな父さんが 

いつも傍にいるから・・

私は とても 満足よ!


おじさんも 大切な奥さんに 

もう会えないと思うと

とても辛いかもしれないけど・・・

いつか天国で 必ず会えるわ!

だから希望を 失わないで!!


それに おじさんには 

大切な息子さんがいるのでしょう?


まだ 生きている存在 

言葉を交わし合える 

大切な存在がいるのだから

今 生かされている人生を 

大切に大切に 生きるべきだと

私は そう思うの!


おじさんどう?

気持ちが 楽になったかしら?」


「お嬢ちゃん・・・君という子は

まるで 天使のようだね・・・


私の心は 久しぶりに 

楽になったような気がするよ!


本当に ありがとう!


そして 約束するよ!

もう死のうなんて 思わない!


私には 息子という 

大切な存在がいるのだから

彼の為にも 命が与えられている限り

精一杯 生きる事を 約束するよ!


お嬢ちゃん 

また会えるかな?」


「もちろんよ! おじさん

また会いましょう! 

元気を出してね!」


「ああ・・・ありがとう!」


葵は去って行った

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